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2021年夏東京五輪を巡る企業のコンプライアンス・リスク 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 今年夏開催予定だった東京五輪・パラリンピックは、3月24日の安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談で2021年夏に延期することが合意され、3月30日には、大会組織委員会の森喜朗会長とバッハ会長らの間で、新たな日程が来年7月23日に開会式、8月8日に閉会式を行うことで合意された。

 その来年夏の東京五輪の開会予定日まであと1年となった7月23日時点で新型コロナウイルス感染判明者数は、全国で981人、開催都市東京都で366人と、いずれも過去最大となった。世界の感染状況も深刻だ。ブラジルを始め中南米諸国では、感染者・死亡者が増加を続け、米国や欧州各国の一部では、経済活動再開後に、感染者数が再び増加に転じている。

 7月中旬に行われたNHKの世論調査の結果では、来年の東京五輪開催についての質問に対して、「さらに延期すべき」が35%、「中止すべき」が31%、「開催すべき」が26%という結果だった。国民の多くは、感染者数が再び全国的に大幅に増加している状況下で、来年夏の東京五輪開催に向けて労力やコストをかけることに否定的ということだ。

 しかし、東京五輪開催を来年夏に延期した際に「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、国民とともに来年のオリンピック・パラリンピックを必ず成功させていきたい」と述べた安倍首相や、組織委の側には、来年夏開催を断念しようとする姿勢はうかがえない。

 安倍首相は、7月22日の新型コロナウイルス対策本部会合で「東京五輪・パラリンピックの開催に向け、アスリートや大会関係者の入国に向けた措置を検討していく」と説明し、これ以上の延期や中止を避け、確実に開催できるよう環境整備を進める考えを示した。

 安倍首相が、現在のような状況に至っても、なお、「五輪来年開催に不退転の決意」で臨もうとするのは、東京五輪を花道(レガシー)にするためなのだろうか。組織委の森喜朗会長も、安倍首相の任期が来年で切れることが、2021年への延期となった原因であることを明らかにしている。

 安倍首相が「不退転の姿勢」を示しているためか、日本政府や組織委の側には、来年夏開催の是非を再検討しようとする動きはみられない。それどころか、開会式1年前となった7月23日、国立競技場で記念イベントが開かれて、白血病からの復帰をめざす競泳女子・池江璃花子選手が、フィールドの中央に立ち、自らの白血病の体験と、東京五輪をめざす選手達の立場を重ね合わせるかのようなメッセージを発したり、各メディアが「一年後の東京五輪開催を信じて」「五輪開催とコロナ対策の両立」などの特集を組んだりするなど、「コロナ感染の下での東京五輪開催」に向けての雰囲気づくりが行われている。

 このような東京五輪の開催をめぐる動きは、日本企業にも大きな影響を与えている。そして、それにどう対応していくかは、「社会の要請に応える」というコンプライアンスの問題でもある。

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