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マスクの教訓 経済安保が新常態の成長戦略に 国分俊史・多摩大大学院教授(ルール形成戦略研究所所長)に聞く(2)

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 新型コロナウイルスの感染が再燃し、本格的な活動再開に多くの企業が踏み切れない状況が続いている。しかし多摩大大学院の国分俊史教授(同大ルール形成戦略研究所所長)は「感染症のパンデミック(世界的大流行)対策は、企業の危機を成長に変えるチャンスでもある」と分析する。カギを握るのは「経済安全保障」を生かした戦略だ。現在の各国が急ぐのはパンデミックに堪える社会システムの構築で、医療分野や生産の国内回帰の流れで新たなニーズが生まれると国分教授は読む。「企業トップは経済安保の視点からニューノーマル(新常態)時代の成長戦略を描くことができる」と説いている。

マスク不足を機に国際ビジネス構造が変化

 ――世界的にマスクと人工呼吸機器が不足するなど医療設備の不備は深刻でした。3~5月の新型コロナ感染拡大期に各国は自国優先に走りました。

 「パンデミック対策を 国の安保戦略の一つに位置づけていた米国でさえ対応しきれていません。医薬品の70%以上を中国とインドから の輸入に依存していることの課題はオバマ政権下で既に認識されていたことで、パンデミックに対する政策の拡充が提言されていました」

 「ですが、トランプ米大統領は就任後、パンデミックに対する投資を実行するどころか、中国に配置していたパンデミックの実態調査チームを削減するなど、十分な政策資源の割り当てが行われない中でパンデミックが現実の問題として発生してしまいました。現在米国ではマスクや医療機器、医薬品をエッセンシャルプロダクトという新たなカテゴリーに位置付け、平時からの国内生産比率の引き上げの必要性を議論し始めています」

 ――欧州でも新型コロナ感染は深刻でした。

 「EUでは3月にインドが医薬品の輸出規制を行った際に危機意識が高まり、抗生物質や鎮痛薬のEU内生産が叫ばれました。サプライチェーン(供給網)の海外依存を経済安保上の課題として認識していなかった日本の混乱は、残念ながら止むを得ません。医療用マスクの70%を輸入に頼り、有効性が期待されたアビガンも、原料の製造は中国に依存している状況でした」

 「世界各国がこうした『自由貿易体制の下での非常時の自国優先』を経験したことで、今後のサプライチェ ーンの在り方に抜本的な変化を生じさせる、新たな前提条件を埋め込んだと思いますす」

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