アフターコロナの働き方

「成果ないけど頑張った」は高評価か? ハイブリッド型人事に限界 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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ハイブリッド型評価 管理職には好都合

 新型コロナ対策でテレワークをはじめた人たちからも、成果が求められる一方で「頻繁に報告を求められる」とか、「まじめに働いているかつねに監視されている気がする」といった声が聞かれる。当然ながら、それは大きなストレスになる。組織学会会員の研究者とHR総研が共同で本年4月に行った緊急調査でも、新型コロナウィルス感染症に関連する問題点として「仕事上でのストレスを抱える従業員が増えた」と回答する企業がほぼ6割に達している。

 人事評価に限らず、日本企業の雇用・人事制度は「ハイブリッド型」だ。採用の際には能力に加えて人物や協調性などを多面的にみるし、配属や異動もまた、適性や相性などを総合して決める。管理職への昇進にも、純然たるマネジメント能力だけでなく、年功や仕事の実績、人間性などが加味される。

 このような「ハイブリッド型」は、主観的であいまいな要素が含まれているので、極論すれば人事部や管理職の胸一つでどうにでもなる。企業や管理職にとって都合がよいシステムだ。

かつての成果主義と同じてつを踏まないために

 しかし、その弊害は小さくない。まず裁量が大きいゆえに選ぶ人、評価する人の見識や評価能力が問われ、相手の不満や不公平感を正面から受け止めなければならない。また何が評価に響くかわからないので相手は萎縮して受け身になり、素の自分を出さない。それが採用のミスマッチを招いたり、社員の能力発揮を妨げたりする可能性がある。

 かつての成果主義と同じ轍(てつ)を踏まないため、もういちど成果主義の効果に注目してみよう。日本能率協会が2004年に主要企業を対象として行った調査では、社員の意欲向上につながっていることに否定的な社員が多かった。また労働政策研究・研修機構の分析では、売上高や経常利益への効果は見いだせないと結論づけている。

 当時と現在とでは経営環境も働く環境も大きく違う。ITが発達し、テレワークを行う技術的な条件も整ってきたいま、一貫したロジックを欠く「ハイブリッド型」をデフォルトにすえる必要があるのか、もういちど考えてもらいたい。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書、2020年7月8日発刊)ほか著書多数。

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