アフターコロナの働き方

「出世=昇進」ではない!テレワークが変えた出世の条件 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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管理職というよりプロデューサー

 ただし多くの場合、自分の力だけでは限界があり、スケールの大きな仕事をするためには、人を巻き込む力が重要になる。このようにいうと、前回取りあげた「こけおどし型」管理職とどこが違うのかと思われるかもしれない。

 しかし、それはまったく違う。旧来型組織では管理職の権限によって有無をいわせず巻き込むことができたが、組織内外のネットワークで仕事をするようになるとそうはいかない。プロジェクトに参加するかどうか、どれだけの貢献をするかは一人ひとりの意思にかかっているからである。

 したがって、いかに魅力的な提案をして一人ひとりにうったえられるか、組織の内外から最適なメンバーを集めチーム力に結びつけられるか、そして事業やプロジェクトを円滑に運営していくリーダーシップがあるかどうかが問われる。イメージとしては管理職というより、マネジャー、ディレクター、プロデューサーに近い。

 興味深い現象が起きている。コロナ禍でテレワークが広がりまだ2、3か月しかたっていないにもかかわらず、すでにネット上で数十人を結集して事業を立ち上げようとしている人があちこちに誕生しているのだ。私が知るかぎり、彼らはけっして組織のなかで出世した人たちではない。どちらかというと旧来の出世競争からは距離を置き、自分なりのビジョンや理想像を抱き続けてきた人が多い。

テレワークで新たな出世のチャンス到来

 LIONのように、他社の社員を対象に副業する人を公募する企業もあらわれてきた。また政府は兼業・副業の時間管理を自己申告制にし、企業の責任を問わない方針を示した。企業に属しながらもネット上で新規ビジネスをはじめたり、外部のプロジェクトに参加したりする人はこれからさらに増えてくるだろう。副業が本業になるとか、将来のめどが立てば転職や独立する人も珍しくなくなるに違いない。

 くり返しになるが、出世の本来の意味は「世に出ること」である。テレワークが契機となって、ほんとうの出世を目ざす人に大きなチャンスがやってきた。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書、2020年7月発刊予定)ほか著書多数。

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