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「出世=昇進」ではない!テレワークが変えた出世の条件 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 「出世」と聞けば、何をいまどき、と冷ややかに受け止める人もいる。たしかに意識調査の結果をみても「出世したい」という人はもはや少数派だ。しかし「出世」を本来の意味である「世に出ること」、あるいは「成功」と置き換えれば、そこそこ出世したいと思っている人は少なくないはずだ。また自分の思いを成し遂げるために、社会的影響力を持ちたいという人はたくさんいる。

 これまで「出世」というと、組織のなかで高い地位に就き「偉く」なること、つまり昇進とほぼ同意語だった。実際、昇進すれば人間の欲求や欲望の大半が満たされるといわれたものだ。承認欲求、自己実現欲求、権力欲、支配欲、金銭欲、物欲、等々である。しかもオリンピックの標語ではないが「より速く、より高く」昇進するほど高い水準で充足できた。だからこそ、多くの人が出世競争にしのぎを削ったのである。

 ところが近年は高い地位に就いても役得はないばかりか、以前ほど尊敬されたり称賛されたりしなくなり、権力を誇示することもできなくなった。一方で高い地位に就くほど何かあれば厳しく責任を追及されるようになり、私生活や人間関係を犠牲にしてまで出世しようという人が少なくなったのである。

 そしていま、出世の場である組織そのものの構造変化にテレワークが拍車をかけようとしている。

出世、タテ型からヨコ型へ

 第1に、ネットワークで仕事をするようになって、社内の部署はもとより、会社の内と外とを隔てる境界もあいまいになってきた。

 第2に、それと並行して組織のフラット化が急速に進みつつあり、いずれ部長、次長、課長といった役職が消えるかもしれない。

 そうなると当然ながら「出世=昇進」は望むべくもない。かりに肩書は残されたとしても、権威も何もなくなるだろう。

 では、昇進に変わる「出世」はどんなイメージか?

 従来の出世がタテ、すなわち垂直方向で偉くなることだったのに対し、これからの出世はヨコ、すなわち水平方向にキャリアアップしていくことである。もちろんキャリアは組織の内部にとどまらず、転職や独立などを含め縦横無尽に展開されている。

 出世の尺度になるのは、一言でいうとどれだけ大きな仕事をしたか(しているか)である。これまでも業界内では、巨大プロジェクトを成功させた人、流行の生みの親、核となる事業を運営するリーダー、年商◯億の営業マン、辣腕編集者、スクープ連発の記者というような評判があったが、それがいっそう多くの業種や職種に広がるだろう。

 そこで問われるのは、いうまでもなく仕事の能力である。

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