アフターコロナの働き方

大声と強い押し…こけおどし型上司、テレワークで退場へ 同志社大学政策学部教授 太田 肇

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 膨らんだおなかを突き出し、肩で風切るように道路の真ん中を外股で闊歩(かっぽ)する。わざと周囲に聞こえるよう、必要以上に大きな声で話す。ビジネス街でこういう人を見かけたら、伝統的な大企業に勤める事務系ホワイトカラーか、役人ではないかとおおよそ見当がつく。

大部屋、集団主義のオフィスに君臨したこけおどし型上司

 彼らに共通するのは、集団主義的な風土が色濃く、仕事の成果が客観的にあらわれにくい職場の住人だという点である。いっぽう技術者や専門職のように仕事の分担がはっきりしていて、成果も比較的目にみえる職場にこのようなタイプは少ない。

 伝統的な大企業の事務部門や多くの役所は、大部屋で仕切りがなく、集団でする仕事が多いため、声の大きい者、押しの強い者が自然と影響力を持ち、場を仕切るようになる。そうした風土にはびこるのが、こうした「こけおどし型」だ。ときには部下の功績を「横取り」し、自分の手柄にしてしまう場合もある。

 それでも彼らはリーダーシップがある、周りを「巻き込む力」をもっていると周囲の目に映り、出世競争を勝ち抜いていくケースが多かった。

正社員しのぐ契約社員も テレワークでわかる真の実力

 ところがテレワークで周りに人がいなくなり、一人ひとりが自力で仕事をするようになると、こけおどしが通用しなくなる。そして社内の評判や勢力図に注目すべき変化の兆しが見えてきた。

 声の大きい人の陰に隠れて存在感の薄かった社員が、実際の仕事はほとんどこなしていたことがわかったとか、遠慮して発言を控えていた人が積極的に提案するようになったという話がしばしば聞かれる。リモート会議だと緊張することがないので、人前で話すのが苦手な人も堂々と意見を言う。おとなしくて目立たなかった社員が周りをうならせるような発言をする姿も見られるそうだ。

 ある会社では契約社員にも在宅勤務を認め、正社員と同じ仕事をさせたところ正社員をしのぐ実績をあげることがわかり、「同一労働同一賃金」の観点から待遇改善に苦慮しているとの声が漏れ聞かれた。

 要するに、テレワークになってから社員が自分のペースで仕事ができるようになり、ほんとうの実力が見えてきたわけである。それが結果として、一人ひとりの評判や社内の勢力図にも変化をもたらしたのである。

 しかし、その地位を脅かされた「こけおどし型」が黙っているはずはない。自律的に仕事をこなす部下に対して「仕事は一人でするものではない」とか、「自分で勝手に判断するな」などといって難癖をつけるし、「コミュニケーションが大切だ」とやたらに会議やリモート飲み会を開こうとする。

 部下がサボっていないか確かめるため頻繁に探りを入れたり、パソコン画面に映る相手の姿にケチをつけたりする「リモハラ」(リモートハラスメント)が多いのもこのタイプだ。そしてコロナ禍が一息ついたいま、彼らはいち早くテレワークをやめて元の働き方に戻そうとしている。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。