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文書・ハンコ・対面 テレワーク阻む「アナログ役所」3つの慣習 日本総合研究所チェアマン・エメリタス 高橋進氏に聞く

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 新型コロナウイルスの感染流行による外出自粛要請の影響で、オンライン化が進み、働き方をはじめ社会生活が大きく変わった。ビジネスでは企業、行政などでテレワークや在宅勤務の導入が一気に広がった。一方、企業間だけでなく、行政との手続きのやりとりでは文書の押印や郵送などで出社を余儀なくされる「ハンコ文化」の弊害が指摘されている。新型コロナ禍ではからずもあぶり出された日本のデジタル化の遅れ。内閣府の規制改革推進会議委員兼議長代理で、日本総合研究所チェアマン・エメリタス(名誉理事長)の高橋進氏は「コロナ禍を機に従来の紙文書の慣習を改め、企業だけでなく政府や地方自治体の電子化を加速するべきだ」と強調する。

 ――新型コロナの影響で働き方は変わりましたか。

 「規制改革推進会議では(感染が流行した)4月から、オンライン会議を導入している。月1回程度の本会議に加え、6つあるワーキング・グループの会合もほとんどがオンラインだ。少ない時で10数人、多いときだと30人弱が会議に参加するが、オンラインでも全く問題はない。コロナ前は内閣府の庁舎で会議を開いていたが、移動もなく事前に資料を読みこなせる時間もあるし、会議が終わった後も(関係する)数人で打ち合わせができる。会議のオンライン化はそれまでまったく検討してこなかったが、コロナを機にやってみたら悪くないし、感染リスクも回避でき、メリットは多い」

コロナ禍でデジタル化が一気に加速

 ――2019年11月から規制改革推進会議のメンバーとして活動されています。

 「会議は雇用や医療介護、投資等6つのワーキング・グループに分かれ、私は議長代理として全体をみる立場だ。11月からの議論で最大のテーマの一つが『デジタル化の推進』。そのために障害となる規制や法制度、社会の仕組みを変えようということで議論を続けてきた。新型コロナで感染拡大防止の観点から厚生労働省や文部科学省を相手にオンライン診療や、オンライン教育をやるべきだと主張した。最初は二の足を踏んでいた厚労省も今回のコロナで特例として初診からオンライン診療を認める決定をし、オンライン教育も児童一人ひとりにパソコンやタブレットを配布する取り組みを一挙に進めることになった。コロナ禍という負のショックだが、日本で遅れていたデジタル化が一気に進むきっかけとなった。この流れは元には戻らないだろう。感染防止のため(距離をとる)ソーシャル・ディスタンスが広まるなど人との接し方の考えも変わり、社会生活全体でオンラインの必要性が強く認識されたことが大きい」

 ――ビジネスパーソンにとっては在宅勤務などテレワークの導入が広がり、働き方も大きく変わりました。

 「テレワークを阻む要因として象徴的なのが紙文書に押印するハンコ文化だ。社内では押印が廃止されたり、社内決済の電子化が進んだりしているが、問題は社外との関係だ。契約書、請求書、納品書など各種文書のやりとりで押印することが長年の商慣行としてある。ハンコを押すことで文書が本物かどうか、証拠能力があるかどうかということだが、電子認証で問題ないのではないか。20年ほど前から技術はあったが、これまで普及してこなかった。単に技術があるだけではダメで、みんなの意識が変わらないと進まない」

 「規制改革推進会議は、押印廃止で議論を続けており、最近、経団連など経済4団体にアンケートを出して押印の有無を聞き取り、各官庁と突き合わせる作業をしている。慣習的にやっていた部分が多く、押印が要らない部分が結構あった。文書をやめて電子化し、メールのやりとりを証拠とすれば相当、業務を簡素化できる」

 「ただ民間企業同士で取引の電子化を進めて効率化しても、国や自治体とのやりとりを変えなければならない。役所との手続きでは文書・ハンコ・対面の3つがはびこっている。特に文書が多いのが不動産、金融、雇用などの分野だ。法律に基づいて押印が必要なものは仕方がないが、法的根拠もなく長年の慣習で続けているものも少なくない。それらをなくす方向で議論している」

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