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従業員シェア コロナ時代のイノベーション契機に 山田久・日本総合研究所副理事長に聞く(上)

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 ――従業員にとって転職といった手段よりも柔軟に対応できそうですね。

 「具体的には飲食、ホテル、航空、タクシー業界などの人員を、利益率は別として繁忙感が高まっている食品・スーパー、宅配、デリバリー、防護服の製造業などに一時的に移ってもらうようにすることです。企業にとっても従業員を解雇しては、事業再開のときに肝心の労働力が不足します。それまでの職場内訓練(OJT)など人材育成にかけたコストも取り戻せません」

 ――具体的な取り組みは始まっているのでしょうか。

 「一部の企業が先駆的な試みを進めています。出前館は『飲食店向け緊急雇用シェア』を始めました。観光の求人サイト『はたらくどっとこむ』と農業の『シェアアグリ』も提携しました。技能実習生の来日が困難になって現場の人手不足が深刻な農業の生産者にあっせんします。ワタミも一部の店舗を閉鎖する一方、人材派遣を始めています」

 ――始まったばかりの仕組みですが、課題は何ですか。

 「従業員シェアが店舗同士、会社同士で完結し、点から面への広がりが進まないことでしょう。日本の企業社会は同業他社の情報には詳しいですが、他業界までは知りません。シェアリング型一時雇用では業界をまたぐ連携が不可欠ですが、現在は限定的です」

 「使用者責任の面でもあいまいになりがちです。例えば従業員シェアを通じデリバリー会社で働いていた従業員がバイク配達の途中で事故にあった時にどう補償するか。第2次の感染リスク対応をどう負担すべきか。労働提供の形態も出向、副業、請負などで使用者責任が違ってきます」

シェア経験通じ新事業創出も

 ――行政の関与が一定程度求められますね。

 「あらゆる業界を網羅するシェアリング型一時雇用の共通プラットフォームを整備すれば、マッチングの可能性は高まるでしょう。ハードの構築ではないのでシステムの費用自体は抑えられます。使用者責任もケースバイケースで明確化し、それぞれのパターンのメリット・デメリットをまとめれば共通プラットフォームの活用を促進できます」

 「現在の雇用調整助成金だけでは、店舗によっては休業していた方が良いといったケースも出てきて、経営者がインセンティブを失いかねません。シェアリング型一時雇用も助成することが効果的です。シェアリング雇用で働いたことで受け取る給与が休業手当よりも十分多くなるように助成金を支給することで、働き手にインセンティブが生まれます」

 ――労働力のミスマッチ解消だけではなく、イノベーションを含めた多様な波及効果も期待できそうです。

 「地域ごとに特化した新しい情報サービス業などは可能性が高いでしょう。さらに従業員シェアを通じデリバリー業界を経験した飲食店の従業員が、商圏に住む人々の日常生活に触れて新ビジネスを思いつくといったケースも十分考えられます」

(聞き手は松本治人)

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