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コロナ後の経済 デジタル・ニューディールが処方箋 宿輪純一・帝京大学経済学部教授に聞く

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 新型コロナウイルス感染症がもたらした経済危機は戦後最悪とも例えられる。金融に端を発し世界を揺るがしたリーマン・ショックや、国内の東日本大震災という天災とは異なり、今回は感染症という世界規模で広がる「見えない敵」。感染力の強い疫病を相手に不安を抱え、外出自粛や経済活動の制限を強いられた経験を踏まえ、ビジネスは新たな対策に向かって歩みを始めつつある。経済再起動のキーワードとして期待されるのは、対面・接触機会を減らす社会経済全体の「デジタル化戦略」。帝京大学経済学部の宿輪純一教授は、1920年代に起きた世界恐慌後、公共事業による需要創出で経済危機を乗り切ろうとした「ニューディール政策」を例にとり、デジタル化推進をこれからのインフラ整備と位置づける「デジタル・ニューディール」へとかじを切ることを訴える。

コロナ禍は100年に一度の災厄

 ――新型コロナ禍が世界の経済に大きな影響を与えています。その影響はかつてのリーマン・ショックを超える景気悪化を指摘する見方もあります。

 「経済危機は大体、10年に1回起きるもので、1980年代のブラックマンデー、90年代のアジア通貨危機、2000年代のリーマン・ショック。これまでは金融危機に端を発し、世界経済に波及したが、新型コロナは疫病が全世界に広がり、経済だけでなく社会そのものをむしばんだ。新型コロナ禍を受け、世界の各国政府によって、非常事態宣言に基づき外出自粛・ロックダウン(都市封鎖)が行われて、需要(消費)が消滅してしまった。(感染拡大防止のため)実施された政府による外出自粛・ロックダウンは、仕方のないことであるが、経済悪化そのものであり、未曽有の事態となっている。当然とるべき対応策は従来とは異なる。新型コロナの感染が終息したとしても、以前のような経済の仕組みや水準に簡単には戻らないことを認識すべきだ。我々はコロナに対するトラウマを持ち続け、政策や経営の前提としてコロナを常に意識し続けることになる」

 ――今回の新型コロナに伴う世界規模での経済停滞ですが、歴史上でみてどういった特異性があると考えますか。

 「経済危機はほぼ10年ごとに起きるが、今回の疫病は100年ごと。100年前に起きたのは第1次世界大戦下の『スペイン風邪』で、亡くなる軍人が多く、スペイン風邪が原因で戦争が終結したと見る向きもある。戦闘で直接命を落とした軍人よりも、疫病で亡くなった軍人が多かったとさえいわれる。疫病に対して我々は基本的には距離をとる、(医療体制の充実などで)免疫をつくるといった方法しかない。日本国内でも戦後、疫病で経済危機がくるとは想定していなかっただろう。(社会がパニックに陥り)経済活動でいえば、需要だけでなく供給まで一気に停滞したというのが最も大きな特徴だ」

 「今回の新型コロナの影響は大きく3つに分けて考えている。まずは中国の局地的な問題だった。(工場や物流の機能停止で)中国とつながりをもつサプライチェーンが混乱し、部品や製品が入ってこなくなった。次に、感染が日本や欧米など先進国に広がり、外出自粛・ロックダウンによって個人消費の需要が激減した。そして最後が、今後、感染力の強い新型コロナを相手に、人と人とが接触することへの恐怖から、以前のような経済の枠組みは、もう戻らなくなってしまったということだ。国内でも飲食業や小売業、観光業などが痛手を被った。とくに訪日外国人(インバウンド)で成長を続けてきた観光業はしばらくは回復の見通しが立ちにくいのではないか」

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