アフターコロナの働き方

飲み会はムダでない!テレワークで見えた「見えない報酬」 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 企業は新型コロナ禍の経験を踏まえ在宅勤務の拡大など快適で効率的な働き方を模索している。そうしたテレワーク導入・拡大に当たっては考慮すべき、見えないが大切な要素があることを指摘したい。わが国のように「建前」の裏に「本音」が、「公」の陰に「私」が隠れている社会では、表の面だけを見て仕事や働き方の効率化を過度に進めると、社員のやる気や働きがいの喪失、それにともなう生産性の低下という思わぬツケが後で回ってくることになりかねない。

 新型コロナウイルス対策としてテレワークを取り入れたのを機に、アフターコロナも在宅勤務を継続するという企業が多い。なかにはオフィスを縮小したり、廃止したりするところまであらわれた。また今回の経験をもとに、国内外の出張や接待ゴルフ・飲食といった「ムダ」も廃止する企業が増えてくるだろう。

 たしかに会社を「仕事をするための場」と割り切るなら、それらのムダを削るのは理にかなっているように見える。

 しかし毎日、自宅でパソコンの画面に向かって仕事をし、家族と一緒に過ごす生活で、ほんとうにすべてが満たされるだろうか? 仲間同士の雑談や交流が大切だからとオンライン飲み会を開いている会社もあるが、それとて周りに家族がいる環境のなかで、どれだけ在宅モードから抜け出せるか疑問だ。

行き過ぎた効率化は社員の「やる気」をそぐ

 仕事に対する報酬は給料だけではない。実は会社に行って働く普通の職業生活のなかで、人はさまざまな「見えない報酬」を受け取っており、それが仕事に対するモチベーションや働きがいを陰で支えている。

 たとえば同僚とのランチや休憩時間に食べるスイーツ、仕事帰りに立ち寄る居酒屋でのビール、カフェでの一服を「がんばった自分へのご褒美」にしている人や、デパートでのウインドウショッピング、書店での立ち読みをささやかな楽しみにしている人もいる。また仕事中の来客や他部署の人との会話から刺激を受けたり、ときには気になった異性に胸をときめかせたりすることもある。

 その中からから生まれる「内発的モチベーション」(仕事の楽しさ・面白さからくるやる気)によって仕事の能率が上がり、新しいアイデアが生まれることも多い。

 また出張のついでに友人や知人を訪ねたり、郷土料理を味わったりして英気を養っている人もいる。そこで得た見聞や人間関係が間接的な形で仕事に役立つこともある。いずれも仕事の「ついで」だからできるのである。

 独りで仕事をする自営業や自由業の人たちは昔から「見えない報酬」、とりわけ人と交わる楽しみが得られる場を意識して、あるいは無意識のうちにつくっていた。

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