新型コロナに勝つ!中小企業の現場から

中小復活の特効薬「ステークホルダー分析法」 儲け産む信と者 地方PR機構代表 殿村 美樹

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 緊急事態宣言が解除されて「ウィズ・コロナ」を合い言葉に新しい日常がスタートした。これからは新型コロナウイルスと共存しながら、社会経済活動を活性化しなければならない。とはいえ現実は厳しい。ただでさえ資金に乏しい中小企業にとって、緊急事態宣言で被った打撃はあまりにも大きく、解決の目途はまったく立っていない。それでも、がむしゃらに頑張ってはみるものの先が見えず、そのうち心身ともに疲れて果ててしまう。こんな五里霧中に陥った中小企業は少なくないだろう。私も31年間、TMオフィス(大阪市)というPR会社を運営してきた経営者。泥沼から這い上がれない辛さは痛いほどわかる。

 そこで、泥沼脱出に抜群の効果を発揮する「ステークホルダー分析法」を紹介したい。これは自社を取り巻く企業や人間関係を視覚化する方法で、PR(パブリック・リレーションズ)のコミュニケーション戦略立案時に使う手だが、自社が今、どんな人々に支えられ、期待され、見放されているのか、ビジネスの人間関係が浮き彫りになるため、思わぬ解決策が浮かぶことが多い。私は自社だけでなくビジネスのコンサルティングにもよく使っている。

売り上げを上げるために大切なものは何か

 たとえば、畳の業界団体「全国畳産業振興会」から、畳の需要回復を相談された時にもこの方法を使った。畳は千年の歴史を持つ日本の伝統産業だが、近年洋風建築が増えるにつれて和室が減少し、平成半ばの約20年間で3分の1にまで需要が落ち込んでいた。そこで私に需要喚起のムードづくりを仕掛けてほしいとの依頼をいただいたのだ。しかし実際のところ、ムード先行で需要を回復させるのは難しい。そこで私はまず、現代に馴染む畳の話題をつくり、それを媒介として他産業に連携を呼び掛け、畳業界に新たな販路を拓こうと考えた。まずは畳業界の皆さんに協力を仰ぎ、車の内装を畳にして「畳でごろ寝カー」と名付けたり、畳でネクタイをつくって「通勤電車にイグサの香り」とキャッチフレーズをつけたりするなど、現代生活にマッチした畳の使い方を示唆する商品を発表した。その一方で、ムードづくりでは、秋葉原のメイド喫茶に協力を仰いで「畳メイド」というキャラクターをつくり、「畳ビズのうた」という畳のエコ効果をベースとした市場開拓ソングを制作し、振付も考えて、次々と「畳メイド」のテレビ出演を仕掛けた。

 その結果、多くのメディアが畳の復興策として取り上げてくれたため、なんとか畳に注目を集めるムードはできたが、肝心の「畳でごろ寝カー」や「畳ネクタイ」が売れなかった。車業界や衣料業界に声をかけたが、コストや使い勝手など様々な課題が噴出して、畳やイグサが採用されることはなかったのである。これでは新しい販路をひらくなど、できるはずもない。五里霧中に陥った私は得意の「ステークホルダー分析」で、畳業界を取り巻く人間関係を分析することにした。すると、たちまち見えていなかった大切なステークホルダーが浮かび上がってきたのである。

 それは、畳を使い続けている古い顧客だった。さらに5年以上敷きっぱなしの畳が全国に約8億枚存在するという衝撃の事実も浮かび上がってきた。つまり、洋風建築が増え、新しい畳が売れなくなったことに気を取られて、これまで古くから畳を使っている顧客に目配りできていなかったのである。さっそく、全国各地の畳店から古い顧客に声をかけて、畳替えを促進するプロジェクトを立ち上げることにした。ただ「畳替え」といっても、特に珍しくない。そこで顧客の注目を集めるムードを仕掛けることにした。

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