アフターコロナの働き方

テレワークの成果主義 仕事の「見える化」から 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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「大きな成果」より「役割しっかりと」

 第2に、「成果」概念そのものの見直しを提案したい。一般社員の場合、営業や開発のような一部の職種を除けば、積極的に大きな「成果をあげる」ことより、しっかりと自分の「役割を果たす」ことを求められている場合が多い。

 新規顧客の獲得やイベント開催を例にとるなら、がむしゃらに新規顧客を獲得しても、急増した顧客に対応できる社内体制が備わっていないかもしれないし、イベントの参加者をたくさん集めすぎても会場に収容しきれないおそれがある。それより一定数の顧客をコンスタントに獲得することや、想定外の事態が発生しても別の方法を工夫してイベント開催を成し遂げることのほうが、はるかに重要なはずだ。

態度や意欲みる「情意効果」通用せず

 第3に、「成果」より「役割」を重視するとなると、相対評価で処遇に細かい差をつける従来の方法はなじみにくい。しかもテレワークのもとではアナログ情報が入らないので、態度や意欲を見る「情意考課」のようにあいまいな評価は通用しない。マネジャーが評価結果に対する説明責任を果たすためには、役割を「しっかり果たしている」「まずまず果たしている」「果たせていない」の3ランクくらいで評価するほうがよいだろう。

 そもそも成果主義といえば欧米企業をイメージしがちだが、それは必ずしも正しくない。たしかに管理職、とりわけ幹部クラスになると成果をあげれば日本企業とは桁違いに高い報酬が与えられる。しかし非管理職の場合、意外にも査定によって処遇に差をつけているところは少ない。職務主義のもとでは、基本的に職務を遂行しているか、役割を果たせているかどうかだけが厳しく問われるのである。

新たな評価と処遇の枠組み必要に

 「成果に厳しい」のと、「成果で差をつける」のとはイコールでないということだ。そして近年は、相対評価そのものを廃止する一方で、優秀な社員は思いきって幹部に抜てきする企業も増えてきた。

 テレワーク導入を機に、かつての成果主義の残像から抜け出し、新たな評価と処遇の枠組みを設計してもらいたい。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)ほか著書多数。

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