アフターコロナの働き方

テレワークの成果主義 仕事の「見える化」から 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 もう四半世紀ほど前になるが、研究会でテレワークの導入について議論していたとき、企業のマネジャーたちから「部下の働く様子が見えないのにどうして評価すればよいのか」という不安の声があがった。

 テレワークが国内でも一気に普及しはじめたいま、当時と同じ声がまたあちこちから聞こえる。そして、社員のがんばりやまじめに働いている姿を目で見て確認できない以上、成果で評価するしかないという考え方がしだいに勢いを増してきた。マネジャーの頭のなかには、かつて流行した成果主義の残像が残っているからである。

 しかし、かつての成果主義をそのまま復活させるとなれば、また同じ「失敗」をくり返すことになりかねない。

分担不明確な成果主義 不公平感生む

 振り返ってみると、2000年前後に一世を風靡した成果主義が短期間に見直しを迫られたのは、社員の不満や不公平感が想像以上に大きかったことが主な理由だった。

 欧米企業と違って、日本企業では一人ひとりの仕事の分担は明確でなく、課や係といった集団単位の仕事がかなりの比重を占めている。そのため一人ひとりの「成果」を正しく評価することが難しい。にもかかわらず非管理職まで「成果」によって評価し、処遇に差をつけようとすると無理が生じ、不満や不公平感が生まれる。それが社員の意欲やパフォーマンスの低下にもつながる。

テレワークではプロセス評価困難

 当時、成果主義を取り入れたものの「成果だけで見るのはおかしい」という現場の声に押されて、多くの企業では成果とともにプロセスも評価するようになった。ただ、一口に「プロセス」といっても、開発がどの段階まで進捗しているか、取引先との交渉がどこまでまとまりかけているかというような「成果につながるプロセス」ではなく、どれだけ遅くまでがんばっているか、まじめに努力しているかといったところに注目する傾向があった。

 いうまでもなく、部下が目の前にいないテレワークのもとで、このようなプロセス評価を行うことは困難だ。

 要するに、かつてのような成果主義を復活させようとしても不可能に近いのである。

 したがっていま、成果を重視したマネジメントを新たに取り入れるには、いくつかの大事なポイントがある。

一人ひとりの仕事結果 エクセルに入力

 第1は、個人の成果や貢献度をどのようにとらえるかである。

 欧米のように個人の職務を明確に定義できればよいが、わが国では欧米と雇用システムが異なるので難しい場合が多い。そのため一人ひとりの貢献度を公平に評価するためには、別の工夫がいる。

 一つの方法が、仕事の「見える化」である。サービス業のある職場では、一人ひとりがどの顧客にどのような対応をしたかを毎日、エクセルに入力し、事務所のだれもが見られようにしている。電話対応などを含め、こなした雑務を点数化して集計し、手当に反映させている会社もある。プロジェクトベースの仕事では、メンバー一人ひとりの名前と果たした役割を映画のエンドロールのように社内のネットに記載すればよいだろう。

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