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「売上蒸発」毎月9兆円 企業は公共サービスに商機 小黒一正・法大教授に聞く(下)

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 政府は新型コロナウイルスへの緊急事態宣言を1カ月延長した。一方で2020年度の補正予算で約25兆7千億円を計上し、日銀は買い入れ上限を設けず必要な額を購入すると表明。連休明けも財政・金融政策を総動員しての対策が続く。小黒一正・法大教授は「財政の限界や日銀のバランスシート問題もあるが、 国債市場の安定性や長期金利抑制の観点からも、今回の対応は一定の評価ができる」と話す。しかし先が見通せない不透明感と将来への不安は増す一方で、早くも第2次補正予算の議論も出てきている。小黒教授は、感染症対策などを公共事業の一種に位置づけ、企業が公共サービスの一部を担う「新型ケインズ政策」での経済再生を唱えている。

半年で57兆6千億兆円の売上蒸発も

 日本経済はどこまで自粛に耐えられるのか。小黒氏は経産省の「経済コンセンサス・活動調査」などを基に日本経済の「売上蒸発」の総額を試算した。15年時点で全産業の売上高は約1625兆円で、1日当たり平均約4.5兆円。最も打撃が大きいとみられる旅宿泊業・飲食サービス業は約25兆円、映画館や劇場などの生活関連サービス業・娯楽業で約46兆円、百貨店などの卸売業・小売業は約501兆円だ。合計の売上高が全産業に占める割合は約35%で、1日当たりは平均約1.6兆円になる。

 さらに、東京商工リサーチが5月7日に発表した第4回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(速報値)などから売り上げ減を日々約20%とみると、長期間にわたる外出制限や飲食店などの営業活動の自粛による売上蒸発は「大ざっぱに計算しても、これらの産業だけで1日平均約0.32兆円、1カ月で9.6兆円にものぼる可能性がある」と従来の試算より悪化していることに小黒氏は危機感を募らせる。企業の資金繰りへの影響は甚大だ。「長期化すれば6カ月で57.6兆円と名目GDP(国内総生産)の約10%にまで膨らむ」と小黒氏。

 4月20日に閣議決定した2020年版の中小企業白書は、宿泊業・飲食サービス業では今後半年間で資金繰り難が深刻化する可能性を指摘している。「財務省の企業統計調査によると資本金1千万~ 5 千万円の中小企業が保有する現預金は運営コストの約 3 か月分しかない。自粛が1年近く継続するならば、さらに25兆円規模の国債発行を覚悟する必要がある」と小黒氏は指摘する。テナント企業のみならず中小不動産業者も支援するため、政府系金融機関が一部を保証する家賃のモラトリアム(猶予)法も欠かせないと強調している。

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