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緊急事態、長期化ほど雇用拡大 スペイン風邪に学ぶ 小黒一正・法大教授に聞く(上)

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 安倍晋三首相は4月30日、5月6日に期限を迎える新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を延長する考えを表明した。延長期間は1カ月程度とみられる。感染が終息に向かうかどうか依然予断を許さないなか、経済再生のために何をすべきか、企業は何を準備すべきか。大蔵省(現・財務省)で財務総合政策研究所の主任研究官などを務めた公共経済学の小黒一正・法大教授(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)に聞いた。

■日本が直面する「トロッコ問題」

 小黒教授は「日本が直面しているのは『トロッコ問題』だ」と指摘する。経済を守るか、命を守るかという選択を迫られ、人々の移動制限を徹底すれば経済が死に、制限を緩めると人命が危険にさらされる。小黒氏は「中途半端が最悪の戦略で、両立を目指すと最終的にどっちも大きな痛手を被る」と分析している。解決のヒントは時間軸と重点の置き方にあるという。その上で「長期で徹底した感染拡大防止を実施した方が、最終的に経済復興のスピードを速めることにつながる」と説く。

 国際通貨基金(IMF)はリーマン・ショック時を上回り、世界大恐慌に次ぐ大幅なマイナス成長を予想する。しかしリーマン・ショックと今回のコロナ禍を比較することは無意味だと小黒氏は言う。「新型コロナ感染が経済に及ぼす影響は、米経済学者のフランク・ナイトが説いた『真の不確実性』といえる。確率をある程度見積もれるリスクとは異なる」とみる。

 1930年代の世界大恐慌と2008年の金融危機は、ともに株価の大暴落から始まった。「どちらも主に金融部門が打撃を受け、危機の連鎖の行方もある程度みえていた。新型コロナでは、打撃を受ける産業や企業はかつてなく広範に分布している」と小黒氏。感染がいつ終息するのか、現時点でどの程度の人が感染しているのかといった基本的な点も不透明だ。

 小黒氏は「新型コロナという自然を相手にしている点で、1918年のスペイン風邪の経験から学ぶべきだ。厳密な感染拡大防止策は、人命を救うだけでなく、経済復興に対しても有益だ」と言い切る。注目しているのが、米連邦準備理事会(FRB)のエコノミストらが3月末に公開した論文。米国30州の主要都市ごとに、スペイン風邪当時のNPI(社会的距離の確保や外出制限などを求める措置)が、どの程度の期間実施されたかを把握し、死亡率と雇用者数を1914年から19年の期間で比較したものだ。

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