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社員100人感染したら何人が重症に?…今そこにある経営危機 経営層のための新型コロナ対策(5) 健康企業代表・医師 亀田高志

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パワハラ防止など心のケアも

 眼に見えない危険は生き物としての人間を刺激し、不安やうつ的な気分を助長する。その結果、疑心暗鬼になって、他者を中傷したり、最悪の場合には暴力行為に及んだりすることがある。こうした不幸な事例が世界的にも報じられている。

 そのことが発熱したり、新型コロナと診断されたりした社員や関係者のいじめや嫌がらせに発展しないように、特に注意しなければならない。政府と厚生労働省が推進する働き方改革でもパワーハラスメントは課題とされているが、こうしたことは自社のパワハラ対策の良否を明らかにするだろう。

 現在検討されている血清抗体検査が広く使用できるようになれば、感染した人は新型コロナに免疫があると判定できるようになるかもしれない。であるならば、感染して回復した人はむしろ歓迎されるべきである。その後、心配なく働いてもらうことができる。

 集団免疫の観点では、終息までに7割以上の社員が感染するかもしれない。であるなら、結果的に感染したことは普通のこととなる。くれぐれも差別や偏見が起きないようにしなければならない。

 そのことを経営幹部として、適切に理解し、新型コロナをきっかけとした職場風土の悪化を防ぐべく、関係部署や関係者との検討を行っていただきたい。

 また、自治体等の関係者の努力で今でも感染事例の疫学調査が継続されている。その際に取引先の関係者まで、調査が及ぶことで信頼関係を壊す可能性はないだろうか? 

 発熱等が把握できていたのに、また本来はより長い期間自宅待機させるべきであったのに、早めに出張させ、その後症状が再燃して、新型コロナと診断され、取引先に感染者の集団発生となるクラスターを生じさせたら、どうなるだろうか?

 その損失の補填のみならず、取引先企業との信頼関係を壊す以外に、企業の社会責任を重視しないという評判によって、ブランドイメージを毀損することになるかもしれない。

 この点も、もしもいまだ行っていないのであれば、早急に関係部署や各責任者との対話を行うことをお勧めしたい。

 最後に、経営幹部として、先ほど例示した数字を眺めてみて、どのように考え、どのように判断しようと思われるだろうか?前回も触れたが、新型コロナの終息まで今後1年半から2年以上を要する可能性がある。この事実をしっかりと心に留めて頂いたであろうか?

 東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まったにもかかわらず、その開催を前提につくった事業計画に固執する経営層の噂も聞く。恐縮であるが、それどころではない、というのが筆者の印象である。

 行政や自治体の首長が宣言している外出自粛要請は単なる期待値やキャッチフレーズではない。特効薬やワクチンを持たない我々ができる最良の選択は人同士の接触を可能な限り無くすことである。だから出勤と出張は停止すべきなのである。

 そのために事業運営の最小化や停止を判断する時期にきている、と考える。

 厳しすぎる判断となるだろうが、意思決定を担う経営幹部として、来年末まで、をとりあえずのめどとして、キャッシュフローの確保や人材の維持を最優先に考えて頂ければ幸いである。

亀田 高志(かめだ・たかし)
株式会社健康企業代表・医師。1991年産業医科大学卒。大手企業の産業医、産業医科大学講師を経て、2006年から産業医科大学設立のベンチャー企業の創業社長。2016年に退任後、健康経営やストレスチェック活用のコンサルティングや講演を手がける。著書に「【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」(新刊、エクスナレッジ)、「健康診断という病」(日経プレミアシリーズ)、「課題ごとに解決! 健康経営マニュアル」(日本法令)、「改訂版 人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援」(労務行政研究所)などがある。

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