BizGateリポート/経営

社員100人感染したら何人が重症に?…今そこにある経営危機 経営層のための新型コロナ対策(5) 健康企業代表・医師 亀田高志

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

100人の社員が取引先等で患者と(後に)判明した人のせき等を浴びて、そのしぶきを吸い込んだ場合、その後の経過がどうなると思いますか?

 せき等を吸い込んだことで感染する経路を飛沫感染と呼ぶ。

 これまで明らかにされている医学的知見をもとに大まかに100人の人たちの経過は次のようになると考えられる。ただし、以下は私見であり、集団ごとに性別や年齢分布、医療体制による違い等があることをあらかじめご承知おき、ご容赦頂きたい。

【100人の働く人がウイルスに感染した場合の経過と課題】
◎症状が出るかどうかは、五分五分である。
 →50人前後が発病し、おおむね5日程度で発熱、せき、全身倦怠(けんたい)感を訴える。
 →常識的にはまず自宅待機が期待される。
◎症状が出ない50人もウイルスを排出することがある。
 →3人~4人家族であれば、家族全員にうつす可能性がある。
 →取引先で同じように数人にうつす可能性がある。
 →このうち、後になって症状が出てくる人がいる。
◎症状が出た50人のうち、40人は軽症のまま経過する。
 →持病等がなく、3日以内に解熱した場合にはPCR検査を受けることはない。
 →PCR検査で陽性となったら、自宅待機やホテル等での滞在が求められる。
 →経営管理的には、いつから出勤させるか、に悩む。
◎残りの10人から重症者が出る。
 →うち過半数で人工呼吸器管理が必要になる。
 →そのうち2人が危篤となり、うち1人が死亡する可能性がある。

 もしも事業継続にこだわり、出社や出張を看過し続ければ、時間差を経て、この数倍から数十倍以上の社員の方々が感染するかもしれない。1000人の社員がいれば、そのうち500人が発病し、数十人が人工呼吸器管理となり、10名もの死亡者が出る可能性がある。

 こうした事態は経営幹部の責任とは無関係と考えるだろうか?

発熱等した社員の職場復帰をどうするか?

 現実に関係先から、「自社の社員が発熱した、と申告してきた。どう対応すればよいのか?」という相談が筆者のところに寄せられている。

 まず、ご理解頂きたいことは、感染した可能性のある社員が職場復帰なり、顧客企業に訪問させても、絶対に大丈夫だという判断は非常に難しいという事実である。

 感染し発病するまでの期間が3週間を超えたケースが報告されているし、一旦PCR検査で陰性化しても後に陽性となる事例もある。

 マスコミを通じて言われているが、国民、市民が相談すべきだとされる帰国者・接触者相談センターを経て同外来等でのPCR検査にたどり着かない人が増えている。

 発熱が早期に収まり、またPCR検査を受けていないからといって、患者ではないという証明にはならない。

 そもそもPCR検査には限界がある。痰(たん)等の検体の採集がうまくでき、熟練した検査技師の方が測定を行っても、新型コロナ患者を正しく「陽性」と判定できるのは7割にとどまる。(これを“感度”、見逃した3割を“偽陰性”と呼ぶ)

 また、医療機関に患者ではない、誰かにうつすことはない、という証明を出してもらうことは難しい。医療崩壊が懸念される中で、医療職や医療機関の負担を増やすPCR検査の陰性や完全に治ったという治癒の証明も求めるべきではない。

 発熱等した社員に関する相談への筆者の回答は、まず「自社の産業医に見解を求めること」であり、「ご本人やご家族から運よく主治医の見解が得られたら参考にすること」となる。

 事業運営の要求を優先し、発熱がすぐに収まった人を少しでも早く仕事に戻そうと配下にプレッシャーをかけると、新型コロナウイルスを排出する社員が他の社員や取引先の関係者に感染させてしまう結果を招く。

 現在のルールでは新型コロナへの濃厚接触者は2週間の自宅待機を求められる。それに準じて、発症まで5日間が多いことから、安全域を考えて、仮に2日程度発熱等が出て改善し、症状が無くなってから、少なくとも1週間は自宅待機措置とした方がよいと筆者は考える。その後出社等してからも、2週間以上はマスク等の着用を関係者との距離を保つ等のことを欠かさず、注意し続けるように、ご本人と関係者に促さなければならない。

 また、高年齢や糖尿病、心臓病や肝疾患等の持病の有無は重症化のハイリスクであると同時に他の人にうつしやすい可能性があることから、職場復帰の際にも考慮すべき点となる。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。