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緊急事態でテレワーク拡大 社員の健康に何が起きるか 経営層のための新型コロナ対策(4) 健康企業代表・医師 亀田高志

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【テレワーク(主に在宅勤務)に伴う健康上の問題】
◎労働安全管理
→在宅勤務中のけが(モバイル勤務あるいは移動中でも)
◎人間工学的要因
→特に在宅の場合に適切な作業姿勢がとりにくい、または不適切な照明
→ノートパソコン等の使用に伴う眼の疲労や手指、肘、肩、首の痛み
◎在宅時等の環境を調整し難い場合
→不適切な騒音・気温・湿度
◎テレワークに伴うストレス
→人間的な対面ではない、コミュニケーションから生じる問題
→子供や老親との同居やその世話に伴う集中困難

 在宅勤務でも安全上の問題があるケースがある。通勤の利便性が高いサテライトオフィスに移動中でも転倒等によって外傷を負うこともある。

 オフィスでの作業よりも自宅のデスクや椅子・照明の調整が難しいこともあるだろう。その場合には眼の疲れや手指等の痛みといった症状を生じることになる。自宅に十分な作業スペースが確保できないケースでは、拘束された姿勢によって問題が起きやすくなる。その点は騒音や気温、湿度も同じであり、いずれもパフォーマンスの低下を招くことに注目すべきである。

 ストレスやメンタルヘルスにかかわる問題には、上述の事柄以外に“コロナ疲れ”や“コロナうつ”といった言葉がメディアで取り上げられている。目に見えないウイルスやメディアで報道される困難に直面している海外の医療機関や医師等の専門職の様子、あるいは身近な人の感染のうわさがこれらを助長する。

 日ごろは親子や夫婦の過ごす時間が少なったのが、学校の休校措置やテレワークを機会に長時間共に過ごすことになった人も少なくない。その関係や環境に慣れないために、互いのストレスを爆発させたり、いさかいに悩んだりすることもあるだろう。

 職場の健康管理では古くから、定期健康診断を含む健康管理と共に、作業を行う環境に対する作業環境管理、休憩時間の取り扱いを含む作業そのものへの対応を意味する作業管理が重視されてきた。これらを「労働衛生の3管理」と呼ぶのだが、自社の産業医や保健師等から3管理に対する助言を受けたり、関係部署に管理職や従業員に対する具体的なガイドを行ったりすることができる。

テレワークによる人事労務管理上の問題

 平時のテレワークでは本来は請負の形で働くケースが少なくない。けれども、新型コロナの流行による場合、本連載の読者の企業では、ほとんどが従業員を雇用していると思う。

 このような雇用型のテレワークでは時間や場所にとらわれないメリットがある一方で、労働基準法のルールが適用されることを忘れてはならない。

 例えば、自社で雇用している管理職や従業員には労働時間管理を含めた人事労務管理が必要になる。フレックスタイム制、専門業務型裁量労働時間制、事業場外のみなし労働時間制等の各雇用形態に応じた管理を在宅勤務でも適正に行わなければならない。

 また不確定要因がある中で過重労働を強いられている働く人が企業だけでなく自治体でも多数に及んでいる。働き方改革の大きな課題である長時間労働による健康障害防止のために、在宅勤務を行う管理職や従業員の労働時間管理を適正に行う必要がある。産業医等の専門家と連携して、ICTも活用しながら、健康状態の把握にも努めるのがよい。

 本来、テレワークの導入では経営幹部の方針表明に始まり、社内外への周知、就業規則等のルールの策定、実施範囲の検討やICTの環境整備やセキュリティ対策を入念に行ってから、テレワークを段階的に行うのが良い。

 けれども新型コロナの流行は4月に入ってスピードを増しており、そうした手順が不十分なまま、見切り発車になっている企業が少なくないのではないか。これまでそうした経験がなく、初めてテレワークにならざるを得ない従業員は、新しい環境に戸惑い、不適応を起こすケースもあるだろう。

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