経営層のためのグローバル・マーケティング

トヨタ、五輪スポンサーに執念 プロモーション投資戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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五輪、通常のプロモーション以上の効果

 TOPからTier1~3まで、これほどの高額なスポンサー料を支払う最大の目的は「ブランド価値の向上」である。五輪は、アスリートが限界を超えて鍛え上げた肉体と技術で最高のパフォーマンスを披露する。スポーツの持つ感動と無限の可能性が人々を惹き付ける。そのスポンサーになることは、企業のイメージをスポーツに重ね合わせることによって通常のプロモーション以上の効果をもたらすのである。スポーツの世界大会は、サッカーやラグビーのワールドカップや世界陸上など数多くある。地域限定ではあるが、アメリカンフットボールのスーパーボールや野球のMLBワールドシリーズなどもある。これらは世界中の人々の関心を呼び、企業のプロモーションとしても極めて重要である。そのような数多いスポーツイベントの中でも、やはり五輪は特別であろう。アスリートである以上、五輪でメダルを取ることは夢であり、その夢に向かって常人にはできない鍛錬を重ねている。その集大成を一瞬のうちに発揮する。100m競走で例えるなら、わずか10秒。わずか10秒の間にそれまでの10~20年の過酷な鍛錬の成果を爆発させるのである。

 プロモーションは、その効果が必ずしも明確でないとして「費用」として考えられがちである。効果が明確でないことは研究開発や設備などにおいても同様である。なのに、研究開発や設備は「投資」とみなされプロモーションは「費用」とみなされてきた。プロモーション効果の検証は精密に行われる必要があるが、経営層は研究開発や設備同様、プロモーションも「投資」と考え戦略を練るべきであろう。五輪はその良い機会を与えている。

 トヨタの豊田章男社長は、東京五輪の延期を受けて「(延期の)判断に至ったことはありがたく敬意を表したい。トップスポンサーの一員として全面的に支援していきたい」と話した。そのうえで「アスリートにも新たな目標ができた。東日本大震災からの復興に加えて新型コロナウイルスにも打ち勝っていく。オールジャパンの姿勢で世界に喜んでもらえる五輪をできるようにしたい」とした。五輪延期で費用などに戸惑うスポンサー企業もあるといわれるなか、トヨタのぶれない姿勢をあらわしている。プロモーションを「投資」として戦略にまで高める覚悟はあるか。スポンサー企業にとって、五輪延期はその試金石ともなる。

大石芳裕(おおいし・よしひろ) 明治大学経営学部教授
専門はグローバル・マーケティング。日本流通学会(理事,前会長)など多くの学会で要職を務める。企業などで海外市場開拓を担う実務家らを講師として招く「グローバル・マーケティング研究会」を主宰。同研究会は第一線のマーケッター、研究者ら約3000人の会員が登録する、実務と学術をつなくグローバル・マーケティング研究の拠点になっている。近著に「グローバル・マーケティング零」(白桃書房)、「実践的グローバル・マーケティング」(ミネルヴァ書房)など

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