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トヨタ、五輪スポンサーに執念 プロモーション投資戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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トヨタ、巨額支払いTOPに

 特筆すべきはトヨタがTOPになったことである。トヨタは2015年にスポンサー契約をし、2年間は日本のみの権利行使であったが2017年からグローバルにTOPとして活動できるようになった。自動車業界は産業の裾野が広く、産業全体の1国のGDPに占める比率も高い。それだけに国益と直接に結びついているので、どこかの国の1企業が排他的にTOPになることが困難であった。トヨタがその壁を破ったのである。公表はされていないが、トヨタがIOCに支払ったスポンサー料は2000億円超と言われている。年間200億円は、通常年間50~100億円と言われるTOPスポンサー料と比較しても破格である。それは自動車会社として初めてTOPの地位に就いただけでなく、Tier1以下のリージョナルスポンサーから自動車会社を閉め出すことになる対価でもあろう。それだけトヨタはブランド価値向上に執念を燃やしたということを意味する。

 五輪のTOP企業は、同時にパラリンピック最上位のワールドワイドパートナーになる権利も買うことができる。トヨタは、airbnb、Atos、サムスン、VISA、パナソニック、ブリヂストンと並んでこの一員となっている。近年、パラリンピックへの注目と共感が高く、テレビCM等でもパラアスリートがよく登場していることはご存じであろう。トヨタも2018年のスーパーボールでカナダの著名な義足アルペンスキーヤーの軌跡を1分間にわたり放映した。米国でもっとも高額なカテゴリーの一つを活用しつつ、さりげなくトヨタがパラリンピックを応援していることを主張している。

 リージョナルスポンサーはTier1からTier3まであるが、五輪が開催される国だけでしか権利を行使できない。東京五輪の場合、日本に限られ、五輪マークではなく東京五輪の組市松紋のエンブレムしか使用できない。他に、東京五輪という呼称の使用権や五輪関連の映像・写真の使用権、大会会場におけるプロモーション、商品・サービスの供給権、大会グッズのプレミアム使用権、チケット割り当てなど、Tierレベルに応じてさまざまな権利がある。リージョナルスポンサーも「1業種1社」の規定があったが、日本オリンピック委員会(JOC)の働きかけで東京五輪においてはこの制約が解除された。

 その結果、Tier1のJOCゴールドパートナー15社の中にはNECと富士通、みずほ銀行と三井住友銀行など競合する会社が同席することになった。Tier1には他にアサヒ、アシックス、キヤノン、エネオス、東京海上日動、日本生命、NTT、野村証券、三井不動産、明治、LIXILが名を連ねている。Tier1のスポンサー料は年間25億円程度と推測されている。

 Tier2のJOCオフィシャルパートナー32社の中にもANAとJAL、SECOMとALSOK、JR東日本と東京メトロなど競合がひしめく。Tier1のLIXILと競合するTOTOもTier2に含まれる。Tier2のスポンサー料は年間15億円程度と推測されている。

 Tier3のJOCオフィシャルサプライヤーは、2020年3月29日現在17社である。清水建設、乃村工藝社、パソナグループ、コクヨ、丸大食品の日本企業のほか、グーグルやボストンコンサルティンググループなどの外資系も含まれる。Tier3でさえ、スポンサー料は年間5億円程度と推測されている。

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