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トヨタ、五輪スポンサーに執念 プロモーション投資戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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 東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定した。新型コロナウイルスがスポーツ界の最大の祭典にまで影響し、アスリートや関係者は困惑していることであろう。「命を守る」ことが最優先されなければならない現在、致し方ないことと割り切り、未来を見据えて努力していただきたい。

五輪スポンサーでブランド価値向上

 オリパラはスポーツ界の最大のイベントであると同時に、企業のプロモーション戦略にとっても最大のイベントである。両者併せて1カ月超の期間(東京2020は7/24~8/9、8/25~9/6の予定だった)、膨大な観客や海外からの来訪者への訴求、世界中への放送、さまざまなメディア露出、あるいは支援するアスリートが活躍することによる支援企業のイメージアップ、さらにはオリパラのスポンサーになることによる商標権の活用など、企業にとって多くの大きなプロモーション効果が得られる。

 ここでは話が複雑になるのでオリンピック(以下、五輪)に限定して話を進める。五輪スポンサーにはグローバルスポンサーとリージョナルスポンサーの2種類がある。グローバルスポンサーは最上級のワールドワイドオリンピックパートナーだけで、リージョナルスポンサーにはゴールドパートナー(Tier1)とオフィシャルパートナー(Tier2)、およびオフィシャルサプライヤー(Tier3)がある。

 ワールドワイドオリンピックパートナーの正式名称はThe Olympic Partner (TOP)であり、国際オリンピック委員会(IOC)が管理する。そのため、グローバルに五輪パートナーであることを訴求できる権利を持つ。五輪マークを商標目的で使用できるのはTOPだけである。契約期間は10年で、TOPスポンサーになれるのは「1業種1社」と定められている。したがって、10年間の契約期間中は同業のライバル企業がスポンサーになりたくてもなれない仕組みとなっている。2020年3月29日時点では、コカ・コーラ、airbnb、アリババ集団、Atos、ダウ・ケミカル、GE、インテル、オメガ、P&G、サムスン、VISA、パナソニック、ブリヂストン、トヨタの14社がTOPである。

 1985年のTOP創設以来、継続しているのはコカ・コーラ、VISA、パナソニックの3社だけであり、長年オリンピックパートナーであったマクドナルドは業績不振のため、2017年に契約期間3年を残して契約を解除した。一方、airbnb、アリババ集団、Atosのような新興企業がTOPに加わっていることが時代の流れを反映している。サムスンは1996年のアトランタ五輪からスポンサーに参入し、1998年の長野冬季五輪からTOPになった。これがサムスンのブランド価値向上に大きな役割を果たした。パナソニックはブランド価値向上だけでなく、他企業とのコラボレーションを通じて技術の向上とその先進性を強調している。

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