サラリーマン人生100本ノック

サラリーマン人生「新しい職場になじめるでしょうか」 東京工業大学大学院特任教授 北澤 孝太郎

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

コミュニケーションとは相手を動かす道具

 それでは、そのコミュニケーション力のつけ方を手順を追って説明します。最初に、コミュニケーションは、単なる意思の疎通ではなく、相手を動かす道具だということをわかってください。武力や金力、権力と同じような作用を求めて、最もお金のかからない方法で行使するのがコミュニケーション力です。ただ、この力は、お金のかからない分、やり方で効果の幅が大きい力でもありますので、その使い方は正しく覚える必要があります。

 まずは、行使の目的を考えましょう。人に理解をしてもらいたいのか、評価をしてもらいたいのか、実際に動いてもらいたいかによって、コミュニケーションの深さ、強さ、幅が変わります。それを決めたら、次にコミュニケーションする相手を見極めます。おだてれば動くタイプなのか、何事にも否定的なタイプなのか、慎重なのかなど、相手の性格によって次のメッセージを変える必要があります。

 メッセージは、言葉とは限りません。彼女や奥様が相手なら、愛しているという言葉を百回言うより、大きな素敵な花束をプレゼントする方が愛しているということを表現するには効果的だったりします。この場合は、花束がメッセージということになります。そして、メッセージが決まったら、最も効果的なタイミングを計ります。今日言うよりも明日言った方がいい場合もありますし、その逆もあります。

 そして、最後にコミュニケーションの方法を決めます。まずは手段。対面か電話かメールなどメッセージか、後者にも最近は、いろいろな種類がありますので適切なものを選ぶことが必要です。さらに、直接伝えるのか間接的に伝えるのかも大きく作用が変わります。大切で細かいことは直接、感情的で大きな効果を考えるなら間接ということでしょうか。

 大切なことは、これらを原則ととらえて、細かく設計し丁寧に実行することです。あなたが、この原則を丁寧に実行していくと、その人との間にいい関係性ができ上がってきます。そうです。人はその関係性で動くのです。逆を考えるとよくわかりますが、目的を決めず、相手のことを理解せず、メッセージはいつも紋切り型で、カッとなったら頭ごなしに怒鳴るという人がいたとしたら、あなたはその人にしたがおうとするでしょうか。

 原則を無視し、丁寧なコミュニケーションを取らないと、その相手との間には、悪い関係性ができ上がってしまい、一度、でき上がるとなかなか崩れません。いい関係性ができ上がると何も話されなくても動きたくなる。悪い関係性なら、どれだけ正しいことを話されても動きたくないと思うのが人間です。コミュニケーション力というのは、この原則をしっかり丁寧に使い、いい関係性をつくるということなのです。

 このようにして、コミュニケーション力をつけ、職場の人との間にいい関係をつくることができれば、必ず仕事ははかどるはずです。職場にもなじめます。そして、それはやりがいにも通じ、あなたのこれからの人生を後押ししてくれることでしょう。

 それから、忘れてならないのは、どんなにコミュニケーション力を使って相手を動かすことに成功したとしても、基本は自分が変わらないといけないということです。成長するということは、その環境に合わせて自分を変化させることです。それを躊躇してはいけません。あなたは、必ず、自分のやりたいことをこの転職でつかむのだ、そのためには、自分を変え、コミュニケーションという武器を身につけ、なんとしてもやり切るという姿勢を貫いてほしいと思います。

北澤 孝太郎 著 『サラリーマン人生100本ノック』(日本経済新聞出版社、2020年)、「6 転職するときの決断」から
北澤 孝太郎(きたざわ・こうたろう)
東京工業大学大学院特任教授 レジェンダ・コーポレーション取締役1962年京都市生まれ。1985年、神戸大学経営学部卒業後、リクルートに入社。20年にわたり営業の最前線で活躍。2005年、日本テレコム(現ソフトバンク)に転身。執行役員法人営業本部長、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ社長、丸善執行役員などを経て、現職。東京工業大学ではMBA科目の「営業戦略・組織」を担当。著書に『営業力100本ノック』『マンガ 営業力100本ノック』(いずれも日本経済新聞出版社)、『営業部はバカなのか』『「場当たり的」が会社を潰す』(いずれも新潮社)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)、『人材が育つ営業現場の共通点』(PHP研究所)、『まんがでわかる営業部はバカなのか』(ゴマブックス)がある。これまでの著作の内容に基づいた講演や、営業リーダーの研修なども行っている(ご興味のある方の問い合わせ先 http://kotaro-gosodan.com)
※日経BizGateの記事を無料で定期的にお届けする会員登録をおすすめします。メルマガ、印刷ページ表示、記事クリッピングなどが利用できます。登録はこちらから

キーワード:経営・企画、人事・経理、営業、技術、製造、経営層、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。