サラリーマン人生100本ノック

サラリーマン人生「新しい職場になじめるでしょうか」 東京工業大学大学院特任教授 北澤 孝太郎

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 あなたは、転職で新たな環境を求める意味を理解しているでしょうか?この連載では書籍『サラリーマン人生100本ノック』をもとに、サラリーマン人生の大きな転機となる転職について解説します。

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新しい職場になじめるでしょうか。コミュニケーション力は上がるのでしょうか

 新しい職場になじめるかどうかは、その会社で能力が発揮できるかが大きな要素になります。その意味では、くどいようですが、会社選びと会社に入ってからの覚悟がとても大切です。自分の価値を発揮できるという観点では、前の会社に比べて仕組みづくりや仕事の仕方が遅れている会社はやりやすいです。

 前の会社では、みなが当たり前にやっていることが、今の会社では希少な価値として受け入れられることが多いからです。人事・経理・財務・法務などの管理部門では、管理体制のレベルは会社によって大きく差があります。メーカーであれば、海外進出の方法や生産設備の新しい仕組み、新商品開発のやり方なども、先行組と後発組とでは違いが大きいと聞きます。営業では、MA(マーケティング・オートメーション)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)の導入や活用に新旧の隔たりが存在しています。

 前の会社でやってきたことが、その会社で活かせ、しかも重宝されるということは、その職場になじめるかどうかという観点では、大きなアドバンテージになります。きっと多くの方から頼りにされるでしょう。ですから、転職の会社選びは、給与や規模よりも、自分の能力が発揮できるところを優先してほしいと繰り返し申し上げているのはこういうことなのです。

前職で常識だったこともいったん捨て去る覚悟

 ただ、少し遅れている企業や規模の小さい会社に入ったら、職域が思い切り拡がることを覚悟しなくてはなりません。特に大手企業で専門領域を扱ってこられた方は、中小企業に入るとここまでやることが増えるのかと驚かれることでしょう。

 新人がやるような基本的なこと(データ収集やコピーとり)、また中堅社員のやるような複雑で段取り的な仕事は当然なこととして、ひょっとしたら自分が最も得意としていたことはできないということも考えられます。また、今までサポートしてくれていた人材の質の違いに愕然とすることも覚悟しなければなりません。中には、まったく機能しない、機能しないどころかお荷物になるような人材も戦力として使わないといけないことだって考えられるのです。

 さらに、やっていることの意義や戦略の質も大きく変わります。中堅中小企業では、生きていくことに必死で、社会貢献や長期戦略などは後回しになることが多いです。なけなしのお金を使って他企業に追いつこうとする場合は、処遇もプロセスに関係なく結果が出てからしか考えられないし、失敗したり遅れが出ると報酬がダウンすることもあり得えます。あなたが思い切り譲歩した大手企業の三割減の給与は、あなたを採用するために思い切り無理をした金額だったりして、実は役員でもそんなにもらっていないということが中小企業では起こりうるのです。

 要するに、転職にはいい面ばかりではなく、悲観的なシナリオもあるのだということをまずは、理解することです。特に報酬については、一番ギャップが出るところですので、直近はあきらめるとか、将来を期待して到達期限を自分で設定するとか、自分なりの心の整理が必要です。

 そのうえで、人間関係をまず構築して、信頼を築きながら業績を上げることを考えてください。そう考えるならコミュニケーション力は大きな武器になります。あなたが報酬を犠牲にしてでも獲得したい「やりがい」に大きく影響するでしょう。やり方さえ覚えれば、いくつになってもコミュニケーション力は上がります。そして、それを身につけたら、飛躍的に仕事がしやすくなり、あなたへの信頼も上昇するはずです。

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