官民連携と地域連携で実現する地方創生

SDGs推進で地方創生を

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 地方創生の観点から日本が直面する課題解決に挑む日経地方創生フォーラム「官民連携と地域連携で実現する地方創生」(主催=日本経済新聞社、共催=UR都市機構)が2月17日、東京・大手町の日経ホールで開催された。「信州ITバレー構想」と「持続可能なまちづくりと地方創生」がテーマの講演を採録する。

■基調講演 信州ITバレー構想 ~Society5.0時代の地方創生~

IT人材・産業の集積に力

長野県知事 阿部 守一 氏

 長野県は自然が豊かで、大都市圏等との交通の利便性も高く、移住先として高い人気を誇っている。高度な技術力を持った製造業が集積しており、研究開発拠点の立地も多く、ものづくり産業が非常に盛んである。一方、最近はクリエイティブ企業のオフィス開設やリゾートテレワークといった動きが活発になってきている。

 こうした特色や動きを受け、今、長野県が取り組んでいるのが「信州ITバレー構想」だ。IT(情報技術)人材・産業の集積を図り、様々な産業分野でのデジタルトランスフォーメーションを推進していく。発案者の一人は長野県立大学理事長を務める元ソニー社長の安藤国威氏。県内の経済界・産業界からも「県として取り組むべき」との提言を頂き、共に取り組みを始めている。構想実現に向けて、ITビジネスの創出やクリエイティブ人材の育成、立地推進など、様々な施策を重点的に実施していく。

 まず、ITビジネスの創出を促進させる。産学官連携による協働効果を創出する「信州ITバレー推進協議会」や大学とのコラボレーション、LINE社長の出澤剛氏をはじめとした信州ITバレー構想アンバサダーによるサポートなどを通じて、IT企業やIT人材を徹底的に応援する。

 クリエイティブ人材を育む環境も整備。2019年11月からは長野市の善光寺門前をイノベーションの創発地域として活性化させる「善光寺門前イノベーションタウンプロジェクト」がスタート。月1回の起業家ピッチや、海外のIT人材確保の取り組みなど、5年間で100のプロジェクトを立ち上げて実行する。

 企業立地等に対するインセンティブも用意している。県内に事業所を新設した事業者には、ICT(情報通信技術)産業立地助成金として最大3億円まで助成。他にも県外から移住して就業・創業する人への「UIJターン就業・創業移住支援事業」、ソーシャル・イノベーションによる創業を応援する「ソーシャル・ビジネス創業支援金」がある。また、実際にビジネスに適した環境かどうか試してみたい人向けのトライアル支援「おためしナガノ」も実施。住宅を提供するほか、オフィス利用料や引っ越し代として最大30万円までを補助している。

 野尻湖畔にオフィスを作ったウェブ制作会社LIGなど、長野県らしい自然豊かな環境に、多くのクリエイティブ企業が集まり始めている。信州ITバレー構想を推進し、集積の流れをさらに加速させていく。

 われわれは様々な支援策やエコシステムを作って企業をお待ちしているが、立地に至らなくても長野県の豊かな環境は、テレワークでも活用可能だ。和歌山県の仁坂吉伸知事と私が中心となって「ワーケーション自治体協議会」を設立し、多くの県や市町村に呼びかけてリゾートテレワークを推進している。

 長野県には白馬村、信濃町、軽井沢町など全国有数のリゾート地があるが、リゾート地が近年ではビジネスの場に変わってきている。短期滞在でも長期滞在でも、企業にとって地域とつながるビジネスチャンスの場になるだろう。さらに多様なライフスタイルや文化、自然に親しむことで新たな気づきをもたらすことができるはずだ。

 すばらしい環境の中で仕事をすると生産性が上がり、ストレスも軽減されて社員の健康にも有益だとわれわれは考えている。Society5.0時代の今こそ、新たな働き方や環境でイノベーションを実現していくことが大切だ。今年8月には軽井沢で「ワールドIT人材フォーラム」を開催予定なので、多くの人にご来場いただきたい。

 長野県はSDGs未来都市でもあり、各都道府県の中で唯一、気候非常事態宣言を出している。自然と共生して発展してきた県だからこそ、観光や農業などの様々なビジネスは、豊かな自然環境の保全抜きには考えられない。全国の自治体と連携して気候変動の問題に対応していく。また、全国で唯一、「SDGs推進企業登録制度」を設けており、登録した企業と長野県、大学などが連携してSDGs(持続可能な開発目標)を推進する体制も整えている。

 環境にやさしい取り組みを進めながら、そしてSDGsの目標達成を常に意識しながら、IT人材・産業の集積を目指しているのが今の長野県の姿だ。IT企業の方々にはぜひ長野県への立地を考えていただきたい。立地までいかずとも、「おためしナガノ」やリゾートテレワークという形で長野県のビジネス環境を自分の目で確かめてほしい。

■企業講演 持続可能なまちづくりと地方創生

公共資産の価値評価支援

清水建設 常務執行役員 LCV事業本部長 那須原 和良 氏

 13年に「インフラ長寿命化基本計画」が策定され、翌年には「公共施設等総合管理計画」の策定が各地方自治体に要請された。その中の3つのキーワードが「公共施設の管理」「まちづくり」「国土の強じん化」だ。しかし計画は立てたものの実施が難しいというのが共通の課題だ。公共施設やインフラの維持費が増大する一方で、人口減少に伴い税収が減り、財政が縮小化。労働力が不足して地域の活力も失われていくため、どう解決していくかが重要だ。

 公共施設とインフラの整合性を、強じん化と市民への公共サービス提供の両視点から評価し、コンパクト&ネットワーク化に向けて再編しなければいけない。公共施設は統廃合・集約化・再配置を行い、道路や上下水道などのインフラは管理水準を重要なものから階層化していき、どう管理するかを決める必要がある。

 当社は公共施設・インフラ統合評価システム「PAS(パブリック・アセット・シミュレーター)」を開発した。様々な行政データを道路ネットワークに乗せて分析し、公共資産の価値を再評価するものだ。PASは個別施設の利用度や劣化度の評価だけでなく、道路をベースにしているので、アクセス方法も含めて利用者視点に近い資産評価ができる。

 例えば行政施設を再配置することで住民アクセスがどう影響を受けるかが定量的に評価可能だ。人口分布の変化の影響や、コンパクトシティ施策で都市機能が変わったことに対する効果も可視化するため、どう集約・分散するかの検討に役立てることもできる。さらに地域の人口・年齢分布や避難所の場所などを重ね合わせることで、地域防災計画の立案やタイムライン(防災行動計画)の基礎資料にもなる。

 PASの定量評価と診断技術を活用して、道路の維持管理システムの確立にも取り組んでいる。英ガイスト社の画像解析技術と組み合わせて、道路の損傷レベルを5段階で評価。そのデータを基に、既存道路の維持管理業務の効率化を図る。

 当社はこのような地域課題解決のほか、地域資源の活用という面でも自治体を支援している。長野県東御市では、木質バイオマス発電事業を行う「信州ウッドパワープロジェクト」を実施。発電と間伐材のチップ化によって年間6500トンの二酸化炭素(CO2)を削減するほか、林業振興と分散電源の強化による国土強じん化、工事や運転メンテナンスによる雇用創出効果も期待できる。

 スマートシティの取り組みでは、埼玉県毛呂山町と東京都の豊洲エリアで国土交通省の先行モデルプロジェクトに関わっている。スマートシティは人の課題をテクノロジーで解決するものであることを念頭に、人中心でQOL(生活の質)の高いモデルを構築し、他地域のスマートシティへ展開していく考えだ。

 持続可能なまちづくりと地方創生のためには、コア人材を中心としたビジネス連携・コミュニティ連携が重要だ。ぜひ皆さんも地元のまちづくりに参加し、地方創生に取り組んでいただきたい。

主催:日本経済新聞社 共催:UR都市機構 後援:内閣府 協賛:三井住友ファイナンス&リース、スマートウエルネスコミュニティ協議会、清水建設、マイナビ、九州フィナンシャルグループ、東京センチュリー、セールスフォース・ドットコム、東海大学、KDDI、Airbnb

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