官民連携と地域連携で実現する地方創生

企業版ふるさと納税で実現する地方創生 企業版ふるさと納税 優れた活用事例を表彰

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 2月17日、内閣府は東京・大手町の日経ホールで「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」を行った。表彰式に続き、受賞した地方公共団体・企業が事業内容をプレゼンテーション。審査員が講評と今後の取り組みに対する期待を語った。

■挨拶

 内閣府副大臣 大塚 拓氏

 安倍内閣は地方創生を最重要政策課題の一つとして掲げ、様々な施策に取り組んできた。昨年末には2020年度からスタートする第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を閣議決定し、地方創生の動きを加速する。第2期の総合戦略では、地方への移住・定着をさらに促進するとともに、地方とのつながりを強化。地方移住の裾野を拡大するため、地域とつながる人や企業を増やす取り組みとして、地域と多様な関わりを持つ「関係人口」の創出・拡大、「企業版ふるさと納税」の活用・促進を強く推し進めていく。

 20年度の税制改正では、企業や地方公共団体からの意見、要望を踏まえ、寄付をする企業の税の軽減効果を最大約9割に引き上げる。同時に、手続きを簡素化するなど大幅な見直しを行い、企業と地方公共団体の双方にとって使いやすい仕組みにする。実りある地方創生のためには、移住・定住や人材育成など地域の活性化を図ろうとする地方公共団体と、地域社会に貢献しようとする企業がウィンウィンの関係でプロジェクトに取り組み、息の長い関係を構築することが肝要であり、企業版ふるさと納税は絶好の仕組みだ。ぜひ多くの企業、地域で活用してほしい。

 特に顕著な功績を上げ、他の模範となると認められる活動を行った地方公共団体と企業を顕彰する本表彰は2回目となる。地方公共団体部門では、茨城県境町と群馬県下仁田町、企業部門では小松マテーレ、ディスコ、長谷工コーポレーションを受賞者として決定した。本日の表彰を契機に各企業と地方公共団体の間で、一層強固で末永いパートナーシップが構築されることに加え、地方創生の推進がさらに大きなうねりとなって全国に広がっていくことを期待したい。

企業版ふるさと納税の大幅な見直し 2020年度~(予定)

 企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対し企業が寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組み。2019年12月に閣議決定された税制改正の大綱において、特例措置の適用期限を5年間延長(24年度まで)するほか、税額控除割合の引き上げや認定手続の簡素化、併用可能な国の補助金・交付金の範囲の拡大、寄付時期の制限の大幅な緩和を実施することとされた。これらを盛り込んだ関係法令が成立すれば損金算入による軽減効果(寄付額の約3割)と合わせ最大で寄付額の約9割が軽減され、実質的な企業負担が約1割まで圧縮されるなど、より使いやすい仕組みとなる。
■表彰式&プレゼンテーション
受賞団体とプレゼンテーター

 茨城県境町 町長 橋本 正裕氏(地方公共団体部門)
 群馬県下仁田町 町長 原 秀男氏(地方公共団体部門)
 小松マテーレ 代表取締役会長兼社長 中山 賢一氏(企業部門)
 ディスコ 常務取締役 田村 隆夫氏(企業部門)
 長谷工コーポレーション 代表取締役 副社長執行役員 村塚 章介氏(企業部門)

企業にもメリット多い多彩な連携

 表彰式後に行われたプレゼンテーションでは、各受賞団体から企業版ふるさと納税を活用した背景や具体的な取り組み内容が紹介された。

 「企業が地域づくりの主役に」をスローガンとする茨城県境町では、活用した理由に人口減少と財政難を挙げた。

 橋本町長は「財政の立て直しを図る中、境町の収入を増やす施策に転じる柱になったのが企業版ふるさと納税」と説明。2018年度には、3億円を超える寄付を集めた。資金は公園のリノベーションや災害対策、空き家対策などに充当。知名度が高いとはいえない境町が寄付金を集められた背景には、精力的なトップセールスがあった。「決断の速いオーナー経営者などを中心に全国を訪問した」という。

 群馬県下仁田町も、人口減少と高まる一方の高齢化率を活用理由に挙げる。若者を町に集めるため17年3月に新たな奨学金制度を立ち上げた。「高校、大学などを卒業後に町に定住すれば、返済相当額を町が負担する仕組み。他地域に進学しても、卒業後は地元に帰ってほしいとの願いを込めた」という。

 地元金融機関とも連携し「行政、金融機関、保護者がワンチームとなって未来ある学生を応援していくことになり、将来的な財源確保の基金創設のために企業版ふるさと納税を活用した」(原町長)。

 石川県の伝統産業、九谷焼の復興への思いがあったからだと述べたのは小松マテーレだ。本社は石川県能美市だが創業の地は小松市。中山会長は小松市長と知己があり、「九谷焼の製造で非常に重要な製土所が崩壊寸前だが、修理・改築する資金がない」と相談されたのが端緒だった。

 同社は制度を活用し、19年5月、古い製土所を建築家・隈研吾氏設計による新しいセラミックラボラトリー「セラボ九谷」としてよみがえらせた。地元産の杉材や石材が使われ周囲ののどかな自然とも調和した建物で、「これまで製土所を訪問する人はいなかったが、現在は多くの観光客でにぎわっている」という。

 広島県呉市を創業地とするディスコは、豪雨災害に見舞われた呉市への寄付に制度を活用。社員を動員して飲料水などの配給にも尽力した。

 寄付を受けた呉市からは、ディスコへの謝意を述べるとともに寄付金の活用について解説があった。「呉市は急傾斜地が多く、18年7月の豪雨災害で大変な被害があった。災害を機縁に人口流出が増えることを少しでも抑えようと、寄付金を市独自の災害見舞金や借り上げ住宅の提供対象の拡大、観光施設の改修などに活用した。国の補正予算などの災害復旧費はあるが、市独自のイベント開催に寄付金を活用し、いち早く観光客を取り戻せた」。国庫補助の対象にならない復旧復興関係費用や、早期の復興に企業版ふるさと納税を活用した好例といえる。

 長谷工コーポレーションは、人口約5500の奈良県明日香村と官民連携、地域連携を行っている。明日香村には高松塚古墳、キトラ古墳など多くの遺跡や美しい棚田もある。半面、人口減に陥っており、同社グループ会社が管理するマンションで明日香村産の新鮮な野菜販売をしたことが連携のきっかけだった。

 同社の村塚副社長は、「明日香村と明日香村地域振興公社、当社の3者で官民連携協定を締結。明日香村で“堪能する・経験する・居住する”の3本柱を促進している。例えば“経験する”では、マンション入居者に貸し農園として利用してもらい、現地の農家との交流を深めている」と話した。

 企業版ふるさと納税は、地域はもちろん企業にとってもメリットが多い。プレゼンテーションでは、今後の多様な活用拡大を期待させる多彩な好事例が示された。

■審査委員コメント

制度改正で地方創生は新ステージに

 日本政策投資銀行 取締役常務執行役員 地下 誠二氏
 トラストバンク 会長兼ファウンダー 須永 珠代氏
 京都産業大学 学長補佐・法学部教授 山田 啓二氏

 審査のポイントになったのは「官民連携」「積極性」「地域性・独自性」「波及効果」の4点だ。「受賞しなかった案件も含め、地域創生のために多様な工夫がなされていることに感銘を受けた」と話すのは地下氏。「境町は全国でトップセールスに奔走する町長の積極性が素晴らしく、寄付金受け入れ額が2016年度から3年連続で自治体のトップ3に入った。民間企業に丁寧に説明してアプローチしている」

 下仁田町については「寄付金対象事業のつくり込みに当たっての官民連携を高く評価した。奨学金免除は簡単に見えるが、実は非常にコストがかかる。少人数を長期にわたってフォローする必要もある。私も奨学金制度創設の相談を受けることがあり、結局受けてくれる金融機関がなく諦めた事例も知っている。その難しさの中、官民連携で実現したのは画期的だ。地元回帰者14人の実績も素晴らしい」と絶賛した。

 須永氏は、小松マテーレの取り組みについて「本業が素材を扱っており、九谷焼も素材が最重要。素材に対する感謝の気持ちを、業種は違っても共感を持って支援する姿勢が素晴らしい」と述べた。

 またディスコの取り組みを他の自治体への手本と高く評価した。「災害時に活用できる資金の有無は重要で、企業版ふるさと納税がその原資になることを実証してみせた」

 長谷工コーポレーションについては、「社会貢献と企業利益とを両立するCSV、共通価値の創造にも力を入れている」点を評価。「制度の趣旨や魅力をもっと多くの企業に知ってほしい」と話した。

 16年間、京都府知事を務めた経験のある山田氏は、「企業が約4割を負担していたこの制度が、来年度からは最大約1割まで軽減できることになりブレークする予感がある。企業には寄付を永続的に行うため説得力のある説明が求められ、企業のCSRだけではなく、企業と市町村でウィンウィンの関係を創ることにこの制度の永続可能性がある。また、私が期待しているのは県庁所在地や大都市ではなく、5万人から10万人程度の地方の中小都市の創生だ。大都市よりも域内総生産の多いドイツのローカルハブのような中小都市をつくることができれば、地方創生も新しいステージに進むはずだ。制度改正はその起爆剤になる」とし、改正による効果に期待を寄せた。

■総括

地域のため新たな挑戦を期待

 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 地方創生総括官補 多田 健一郎氏

 今回の受賞団体はいずれも、制度が拡充される前にもかかわらず、非常に先駆的な取り組みをしている。来年度以降は制度拡充により、これまで以上に全国の自治体と多種多様な企業とのコラボレーションが可能になってくる。

 現行では寄付金は事業費の確定後でないと受け取れないが、来年度以降は事業の途中でも必要な事業費の範囲内であれば、受け取れるようになる。企業側からすると、寄付の時期を選べるため、自社の経営状況に応じた寄付が可能になる。

 東京本社の企業で働く皆様にとっても地方はふるさとでもあり、また経済活動にとっても重要な場所であると思う。その地域の課題を解決するために、あるいは独自の産業育成や雇用拡大のために、この制度を活用した多彩なウィンウィンの関係が全国に広がり、新たに構築されることを期待している。

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