経営層のためのグローバル・マーケティング

新型コロナ、ピンチをチャンスに 新ビジネスの契機 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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国家間の不信増大を懸念

 新型コロナがビジネスに与える影響は甚大である。株の暴落がそのことを端的に物語っている。3月9日の米国ダウ工業株30種平均は、原油安も加わって、前週末比で一時2000ドル超下げた。サプライチェーンの寸断、需要の縮減、人の移動制限などこれまで世界経済を支えてきた既存秩序に大きなヒビが入ったことは事実である。ただ筆者は、これらのことは時間が経てば修復可能だと見ている。体力の無い中小零細企業や所得を失う人々の支援は必要であるが、既存秩序そのものの崩壊には至らないであろう。

 筆者がむしろ気に掛かるのは、人々のマインドである。2010年代に入って世界的に顕著になった集団心理のパニック的進行が新型コロナによって増幅されつつある。マスク・トイレットペーパー騒動は氷山の一角にすぎない。むしろ重要なのは国家間における不信感の増大である。2010年代に進行した自国第一主義・ポピュリズムが新型コロナによって増幅され、他者を非難しお互いを隔離することにならないことを望む。

 検疫・隔離を意味するクアランティン(quarantine)はペスト(黒死病)が流行ったベネチアで外航船を40日間隔離したことによるイタリア語のクアランタ(Quaranta=40)が語源であると、映画「インフェルノ」でラングドン教授(トム・ハンクス)が語る。ペストは14.15世紀当時の社会構造を大きく変えた。中国が現在世界最高率のEC(電子商取引)国になっている一因が2002-03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)であると言われている。例えば劉強東は家電量販店チェーンを完全に閉鎖してネット通販の京東集団(JDドットコム)を設立した。新型コロナも不幸な出来事ではあるが、人間の英知で「災い転じて福と成す」としていきたい。

大石芳裕(おおいし・よしひろ) 明治大学経営学部教授
専門はグローバル・マーケティング。日本流通学会(理事,前会長)など多くの学会で要職を務める。企業などで海外市場開拓を担う実務家らを講師として招く「グローバル・マーケティング研究会」を主宰。同研究会は第一線のマーケッター、研究者ら約3000人の会員が登録する、実務と学術をつなくグローバル・マーケティング研究の拠点になっている。近著に「グローバル・マーケティング零」(白桃書房)、「実践的グローバル・マーケティング」(ミネルヴァ書房)など

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