サラリーマン人生100本ノック

サラリーマン人生「転職を成功させるにはどうすればよいですか」 東京工業大学大学院特任教授 北澤 孝太郎

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 そんなことにならないように、退職するまでの筋を守るべきです。まず、直属の上司に口頭で伝え、お伺いを立てます。退職届の提出や同僚や関係者への報告は、その企業が了承して正式な退職日程が決まってからです。会社が口頭でのやり取りで了承していない間に、いきなり退職届を提出したり、同僚や関係者に次に行く会社のことを報告したりする行為は、退職される方の立場からすると、今まで一緒にやってきてこれからもやることを前提としている人の気持ちを裏切ることになりますし、引き止めようと考えている人の気持ちを逆なでします。

 もちろん、法律では、退職日の二週間前に報告すればよいということになってはいますが、トラブルなくスムーズに退職するためには、変にもめごとを起こす行為は慎みましょう。さらに、業務の引き継ぎをきっちりやり、後任者が困らないようにすることも転職する人のマナーと心得てください。もちろん、今だけを考えてある程度適当にと考えることもできますが、そのいい加減な態度、行為が、あなたの評判につながったり、それ以降のビジネスに影響を及ぼしたりするのが人生です。不思議に思われるかもしれませんが、縁は巡ります。因果応報ということが実際に起こったりもします。

転職先でのマナー

 そして、新しい会社に行ってからも、マナーや自分の力を発揮するため手順があるということを忘れてはなりません。

 当たり前のことかもしれませんが、まず、謙虚な気持ちになって、自分から挨拶することを心がけましょう。役職の高い人ほど、プライドが邪魔して、役職の低い人に挨拶できない人が多いです。あなたがどれだけ役職が高くても、その職場では、相手の方が先輩は先輩です。その会社のことをいろいろと教えていただかないと仕事に支障をきたすこともあるでしょう。多くの人に好感を持ってもらわないといけません。

 さらに、自らいろんなことを率先してやることを心がけましょう。特に、今までなら自分の業務外と思われることも、できる限りやってみることをおすすめします。会社が変わると常識や業務の役割や範囲は変わるものです。そして、逆に絶対にやってはいけないことは、前の会社の常識を引きずってそれを正当化したり、のっけからその会社の課題や問題点を指摘したりする行為です。「前の会社では、こうしていた」「この会社ってここが問題ですね」など、すぐに活躍しようと肩に力が入るあまり、その会社の方々を無意識に批判するような行為は、できるだけ慎みたいものです。どんなに目に余る、直さなければと思っても、それらの行為は、まずは人間関係をつくって、ある程度信頼ができ上がってから行うべきでしょう。

 一度転職をすると、転職に対する考えが変わります。今まで引きずっていたものから一気に開放されます。人を動かす関係のことを「つながり」、人から動かされる関係のことを「しがらみ」と言うならば、「しがらみ」がなくなり、ゼロの状態から「つながり」をつくっていくというような感じでしょうか。

 どうしてこんなことにこだわっていたのかと思うと同時に、自分の「思い」を実現する期待が高まります。そのことが快感になり、転職は気持ちのリセットの手段と考えるようになり、短時間の間に何度も繰り返す方が多いのも事実です。ただ、やはりここであなたがなしとげなければならないのは、「思い」の実現ということです。よくよく事前準備をしないいい加減な転職活動の結果、転職先の企業が自分に合わないという不幸なこともあるかもしれません。

 しかし、多くの場合は、自分の「思い」に照らし合わせて、それを実現できると思ったから移ってきたのです。「思い」を実現するための知識習得に勤しみましょう。大人ですから、自分をコントロールしてください。人との違いをつくり、選ばれる立ち位置を創り出しましょう。そのための戦略を決めて、実践策を何度も繰り返して実行しましょう。それも必要な手続きです。

 転職に条件というものがあるなら、あなたの「思い」が実現しそうもない転職はしないこと。こういう人生を歩みたい、こんな仕事をしたい、こんな人間関係を築きたい、こんな生活を実現したいという「思い」をなしとげるための転職にしてほしいと思います。

北澤 孝太郎 著 『サラリーマン人生100本ノック』(日本経済新聞出版社、2020年)、「6 転職するときの決断」から
北澤 孝太郎(きたざわ・こうたろう)
東京工業大学大学院特任教授 レジェンダ・コーポレーション取締役1962年京都市生まれ。1985年、神戸大学経営学部卒業後、リクルートに入社。20年にわたり営業の最前線で活躍。2005年、日本テレコム(現ソフトバンク)に転身。執行役員法人営業本部長、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ社長、丸善執行役員などを経て、現職。東京工業大学ではMBA科目の「営業戦略・組織」を担当。著書に『営業力100本ノック』『マンガ 営業力100本ノック』(いずれも日本経済新聞出版社)、『営業部はバカなのか』『「場当たり的」が会社を潰す』(いずれも新潮社)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)、『人材が育つ営業現場の共通点』(PHP研究所)、『まんがでわかる営業部はバカなのか』(ゴマブックス)がある。これまでの著作の内容に基づいた講演や、営業リーダーの研修なども行っている(ご興味のある方の問い合わせ先 http://kotaro-gosodan.com
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キーワード:経営・企画、人事・経理、営業、技術、製造、経営層、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修

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