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「偶然」を味方につける 50代からのキャリアの重ね方 トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 若いころから、上司との面談で「10年後にどうなっていたいの?」「将来はどうしたいの?」と問われるのが苦痛だった。

 将来のビジョンもなく、なんとなく就職したこともあったし、配属先では勉強しても勉強しても先輩に追い付けず、必死な日々であったことも手伝い、常に今のことに精一杯で、10年後の姿なんて聞かれて困惑するばかりだった。

 仕事に慣れた20代後半になってもその問いについては、「困る」としか思わなかった。『10年後、会社がどうなるかもわからないし、世の中がどう変化するのもわからないのに、そんな先のことを聞かないで』と戸惑い、上司の問いには、いつも「ごにょごにょ」とごまかし、年数回の面談をやり過ごしていたものだ。そのとき「10年後は?」と問うた上司たちは、10年たたないうちに離職し 、私もまた入社から10年目には部門が売却され、新会社に転籍することになった。このとき、「ほら、10年後なんてわからないじゃないか」と32歳の私は思ったものだ。

 それから新会社で必死に仕事をして、40代になったころ、「キャリアにはビジョン型と価値観型がある」という話を聴き、興味を持った。調べてみるとコーチングの専門家である平本あきおさんが提唱しているという。早速本も読んでみた。

 平本さんによると、「将来どうなりたいというビジョンを掲げてそれに向かって進んでいく」のがビジョン型であるという。このタイプは欧米には多いが、日本人には少ない。日本人は、どちらかと言うと「今、何を大事にしているか」「何をしているのが自分らしいか」という価値観型である。キャリア観に違いがあるというのだ。

 「ああ、これだ!」と膝を打った。

 「10年後に何になりたいか」と聞かれても答えがない私が、キャリアについて考えていないわけではない。将来ではなく、その時々で大事にしていることを選んでは歩んできたのだと腹落ちしたのだ。

 その後、さらにキャリア開発の勉強を進めていく中で、スタンフォード大学 J.D.クランボルツ氏の「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を知った。これは「人のキャリアは80%くらいが偶然に左右される。偶然を引き寄せるための自分の行動は大事」というもので、自分にとって価値ある偶然を引き起こすためには、以下に示す五つの要素が必要だという。

* 好奇心

* 柔軟性

* 持続性

* 楽観性

* 冒険心(リスクテイク)

 この五つを意識し、実践していくことで、よい偶然が引き起こされ、自分らしいキャリアを歩めるという主張だ。

 仕事柄、50代の方々にこれからどんなキャリアを重ねたいかといった質問をするのだが、「50歳になって今さら『ああなりたい』『こうなりたい』というビジョンや目標はないんだよね」とか「あと数年、定年を無事迎えて、雇用延長で65歳までは働ければいいやと思う」とか「無難に過ごせればいい」と語る方は多い。「宝くじが当たって、老後の資金に心配がなくなれば、60歳でスパッと引退したい」と話す人もいる。

 キャリアとは、結局、どう生きるかということだ。一人ひとりが自分で考え、続けるのも引退するのも、転職や起業するのも、自分で選んでいけばよい。50年も生きて来たのだから、誰かに合わせる義理もなければ、誰かに言われて、したくないことをする必要もないだろう。

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