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新型コロナ イベント開催の是非どう判断するか 経営層のための新型コロナ対策(1) 健康企業代表・医師 亀田高志

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開催是非の判断は通常の意思決定と同じ

 既に中止を決めた企業や団体の関係者は、感染拡大を懸念し国家的な規模での拡大防止に協力する以外に、万が一参加者が感染者、患者として特定されて、利害関係者から責任追及を受けるのが怖い、という気持ちも強かったと思う。

 まず理解すべきは、新型コロナウイルス感染症を理由に開催の是非を考えることは実際には答えの無い問題を考えることだ、という点である。そのことは日ごろの経営判断や意思決定と何ら変わることが無い。

 科学的、医学的にマクロの視点で国民全体の健康を最優先するなら一切開催しない方が良いに決まっている。感染症の専門家のあつまる日本感染症学会は2月初めに既に地域での散発的な流行が起きていると警鐘をならしてきた。

 仮に全人口のうち10%が最終的に感染・発病すると1千万人あまりが軽症から重症となる。死亡率は中国のデータでは2%強ともされているが、日本では医療レベルの違いやウイルスが変化する可能性も考慮すると、0.1%未満に抑えられるかもしれない。それでも実に1万人が今後数カ月の間に亡くなってしまう可能性がある。

 加えて入院中や持病で通院中の人が治療を続ける中で院内感染するだけでなく、治療に支障を生じたりした場合には死者がさらに増える可能性がある。「一人の生命は、全地球よりも重い」と考えるなら“一切の活動を早急に停止すべき”との判断となろう。

 危機管理の面でいえば、対策を講じなければ、患者数のピークは高く、早めにやってきて、これに対策をしっかりと行うと、ピークは低く、遅い時期となる。新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発や予防接種に関する研究がスタートしていて、その成果が活用できるかもしれず、医療機関への影響も小さく抑えられる。

 一方でビジネスイベントは準備の時間や費用、スタッフの手間や規模に応じて広告宣伝まで、多額の費用をかけているはずである。また中止した場合に損失だけでなく機会損失も相当に及ぶことから、踏み切れずにいる関係者もいるのではないか。

 確率的に言えば1億2千万人中の1万人の死亡は季節性のインフルエンザで毎年、亡くなっている数とそれほど違わない。交通事故死は90年代に1万人を下回ったとは言えいまだに年間3千人である。タバコにかかわる死亡は年間10万人以上、アルコール・飲酒による死亡は3万人以上との推定がある。だからといって自動車の運転、タバコ・酒を全面禁止とはならない。

 自社の社員が仮に数千人規模であっても、大半が健常な方ばかりであれば死者が出る可能性は低いと言えるかもしれない。3月に流行が拡大し、日本国内全体で数百人から千人ないし数千人の患者数となっていれば、イベントの参加者が発病しても、社名がマスコミに取り上げられることもないだろう。少し延期をしておくだけで中止までは必要ないだろうとの判断もあり得るかもかもしれない。

 本稿執筆中の2月23日現在でも多数の観客が観戦するプロスポーツの試合がテレビ中継されている。観覧席は通常、互いに近接していて、飲食も行うのでいわゆる濃厚接触が避けられないのだが…。

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