経営層のためのグローバル・マーケティング

後発からシェア首位に フマキラーにみるチャネル戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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地方ディストリビューター69社と直取

 フマキラーはインドネシアでユニークなチャネル戦略を用いて地歩を築いた。フマキラーがインドネシア市場に参入したのは1990年であるが、当時はバイゴン、ヒットなどのライバルが最大市場であるジャワ島を支配しており、後発のフマキラーには不利な状況であった。しかしながら、最大手バイゴンがある事情でジャワ島に集中せざるを得なくなり、フマキラーはその間隙を突いて地方のディストリビューター69社と直接取引を行うようになった。それら地方ディストリビューターが地元のTTに商品を供給し、ジャワ島以外の島々から渦巻き蚊取り線香を販売していく。その結果、たとえばカリマンタン島では渦巻き蚊取り線香で8割強のシェアをとるようになり、インドネシア全体でもフマキラーのブランドが浸透していった。その後、ジャワ島において「エリアフォーカス作戦」という地道な販売方法で渦巻き蚊取り線香を販売していく。今やフマキラーは、インドネシア市場において渦巻き蚊取り線香でトップのシェアを持つようになった。一方、MTに対しては一般のエアゾール殺虫剤のほか「ワンプッシュVAPE」という小型で強力なエアゾール型商品を提供している。プロモーションも原則「ワンプッシュVAPE」に集中し、効率性を図っている。

 ここでは、フマキラーのように地方ディストリビューター69社と直接取引する戦略が「正しい」と主張しているわけではない。それぞれの企業商品の特性や参入時期、ライバルの動向などによって「勝つチャネル戦略」は異なってくる。同じインドネシアでも、ユニ・チャームはフマキラーと同じように直接マルチディストリビューターと取引しているが、マンダムは創業時の合弁相手を通して販売する割合が大きい。花王や味の素、ヤクルトなどは直販とディストリビューターを使い分けている。大事なことは、TTとMTの構成比を動態的に構築し、デザイン・マネジメント・コミュニケーションというチャネル戦略の三原則(Spyder Initiativeの森辺一樹社長)を強化していくことである。

大石芳裕(おおいし・よしひろ) 明治大学経営学部教授
専門はグローバル・マーケティング。日本流通学会(理事,前会長)など多くの学会で要職を務める。企業などで海外市場開拓を担う実務家らを講師として招く「グローバル・マーケティング研究会」を主宰。同研究会は第一線のマーケッター、研究者ら約3000人の会員が登録する、実務と学術をつなくグローバル・マーケティング研究の拠点になっている。近著に「グローバル・マーケティング零」(白桃書房)、「実践的グローバル・マーケティング」(ミネルヴァ書房)など

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