経営層のためのグローバル・マーケティング

後発からシェア首位に フマキラーにみるチャネル戦略 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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 国内マーケティングの「4P」は、製品政策・価格政策・チャネル政策・プロモーション政策という順序で語られることが多い。「誰に、何を、どのように供給するか」というマーケティングの基本を考えれば、対象(ターゲット)が定まったら次に「何を」開発・生産するかを決めるのは当然である。しかしながら、グローバル・マーケティングにおいてはチャネル政策が最初に来る。なぜならば、海外進出の当初は母国で培った商品を海外に導入することが多く、既に商品は存在するのである。それをどのようなチャネルを通して市場に供給するかが最大の課題となる。少なくとも、海外進出の初期にはそのように言えるであろう。

途上国市場開拓は販売網確立から

 とりわけ流通機構が未発達の途上国においては、チャネル戦略の巧拙が業績に大きく影響する。よく知られているように、途上国においては伝統的小売業(TT:Traditional Trade)の存在が大きい。零細なパパママストアやマーケット(いちば)のような旧来の流通機構が根強く残っている。一方で、コンビニエンスストアやハイパーマーケット、スーパーマーケットなどのような近代的小売業(MT:Modern Trade)も近年急速に成長しており、国によってはMTの比率がTTを上回りつつある。

 下表はアジア8カ国におけるMT比率の推移を15年間追ってみたものである。この表から分かることは、(1)アジア8カ国ではMT比率が年々高まっていること、(2)総じて1人当たりのGDPが高くなるとMT比率も高くなること、(3)一口に「途上国」といっても国によってMT比率は大きく異なること、などである。下表には表れていないが、国毎のMT内容を見ると、タイはコンビニエンスストアやハイパーマーケット、スーパーマーケットが並行して発達しているが、インドネシアはコンビニエンスストアが突出して強く、ベトナムは逆にコンビニエンスストアは未発達でハイパーマーケットやスーパーマーケットが発達している。もちろん、商品によってこの比率は大きく異なり、グロサリー分野ではいまだにTTが圧倒的な地位にある。さらに、MTに対してはブランド力に応じてかなりの入店料や棚料を支払わなければならないことや、TTに対しては中間の卸売業者との関係構築に苦労することなども理解しておく必要がある。企業はこのような事情を勘案し、チャネル戦略を組み立てなければならない。

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