EQトレーニング

教育界が注目する非認知能力「EQ」は試験の成績も左右 EQ 取締役会長 高山 直

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

子どもは1日に400回笑うが、大人は15回

 ヘックマン博士の研究でも明らかなように、子どもはこころの感度が高く、感情能力は3歳から10歳にかけて飛躍的に伸びると言われます。この時期の幼児はにぎやかです。どんな騒がしい大人も幼児に比べれば静かです。以前に「子どもは1日200回以上笑うが、大人は20回以下」という記事を読んだことがあります。グリコのCMによればもっと回数は多く、「子どもは1日平均400回笑う」、「大人になると15回に減る」そうです。

 確かにその通りで、仕事で会う大人は笑顔で話しますが、笑い声を聞くことはまれです。その一方で子どもは元気です。孫や親戚の子ども(幼稚園児)がやってくると、家中を探索してふとんを引っ張り出したり、仏壇を開けたり、台所を混乱状態にしたりと大活躍です。

 子どもはよく寝るので、起きて活動する時間を10時間とすると600分。1分半に1回くらいは笑っているとしたら確かに1日400回になります。なぜ笑うのかというと楽しいから。なぜ楽しいかというと、子どものこころは開かれていて先入観がなく、あちこちを探索して新しい発見との出会いを楽しいと感じることができるからです。

基礎的読解力の低下とEQ

 この数年のAIブームによって、異色の本がベストセラーになっています。『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』もその一つです。著者の新井紀子さんは「迫ってきているのは、勤労者の半数を失業の危機に晒してしまうかもしれない実力を培ったAIと、共に生きていかざるを得ない社会です」と執筆の意図を語っておられます。

 そのために必要なのは「AIに肩代わりできない仕事をやる能力」であり、その能力とは、「普通の常識+『読解力を基盤とする』コミュニケーション能力と理解力」だそうです。

 ところがこの能力を日本人が備えているかというと、そうではないようです。新井さんは、「常識や無意識の人間らしい合理的判断は大半の人が持ち合わせていることにしておきます」とかなり皮肉っぽい筆致で書いた上で、「問題は読解力を基盤とする、コミュニケーション能力や理解力です」と指摘しています。

 その指摘は、大学生や中高生を対象にした学力基本調査に基づくものです。単純な算数や国語の問題を出題したところ、問題が解けない学生や生徒が多かったのです。問題が難しいのではありません。解けなかった理由は、問題の意図を読み解けないからです。なぜ読み解けないのでしょうか?

 EQの観点からのわたしの考察ですが、その原因の一つは、問題を最後まで読み込む集中力がない、あるいは集中力が続かないことが考えられます。集中力も感情をうまく使って実現する力です。問題に集中できないと、「適当に答える」、「途中で問題を読まず回答する」ことになり、問題の途中で思考することを止めてしまうのです。

 新井さんは中高生の能力が低いと指摘されていますが、中高生、大学生の能力が低いということは、大人の能力も危機的状況にあると言うことを意味します。その要因が集中力の欠如と関連しているとすれば、そこにもEQの活躍の場がありそうです。

PISA2018でも日本の子どもの読解力低下が報告されている

 子どもの能力に関する調査では、経済協力開発機構(OECD)が2000年に開始し3年ごとに実施しているPISAが有名です。15歳児の学習到達度調査であり、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの能力を調べます。

 日本は国際的に平均点が高い上位グループに位置しており、数学と科学ではトップランクです。しかし読解力はPISA2015から落ちており、PISA2018では504点になってOECD加盟37カ国中の15位でした。

 この読解力について日本経済新聞夕刊(2018年11月6日)は麻布中学・高等学校の国語科教諭、中島克治さんの意見を紹介しています。「高い感受性とブレない強い意志を持ちつつ、他の人の気持ちに寄り添う、そのような力を培うのが読解力だ」。そして読解力を育てる方法として「読書は読解力を育てるには重要だが、まずは日常生活を大切にし、親子の時間を確保してほしい。日々の出来事に接し、感情の起伏を伴う生活を送ることで、読解力は自然と身に付く」とし、「接し方を反対にするのもよい。忙しいなら、話す時間をつくる。子どもにかかりっきりにならず、少し突き放す。過干渉や非干渉は読解力を育むうえで障害になる」と具体的です。

EQによって読解力を高める

 中島さんは読解力を育てるには日常生活が重要と話しておられます。確かにその通りであり、学力が伸びない子どもは意思が弱く、まわりに流される傾向があります。よく言えば社交的でリーダーシップが旺盛で、勉強より友だちとの付き合いを優先します。米国で実施された学力とEQの相関に関する調査結果でも同じような結論が出ています。

 この調査によれば、EQの高低でSAT(日本でいうセンター試験)の結果に数百点レベルでの差異が見られたそうです。EQが高まると、集中力が高まり、やりたいこととやるべきことの優先順位を決めることが容易なので、勉強についてもタイムマネジメントができるのだそうです。

 タイムマネジメントの例として勉強中の夜食があります。受験勉強している最中に夜食を持っていくと、高EQの子どもは、勉強の区切りがついてから夜食を食べたのに対し、低EQの子どもはすぐに食べる傾向が強かったそうです。そしてすぐに食べた子どもは食べ終えてから勉強を再開するときに、食べる前の勉強の箇所から始めることができず、問題の最初からやり直しました。逆に区切りのよいところまで勉強してから夜食を食べた子どもはそこから次に進めたそうです。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。