BizGateリポート/営業

新型肺炎で「籠城」 中国人消費のデジタル化加速 中国市場戦略研究所(CM-RC.com)代表 徐向東

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。中国政府は中国人の移動を制限するなど対策を急いでいますが、収束の見通しはまだ立っていません。今回の問題は、ビジネスの面に限ってみると、グローバル化したサプライチェーンを通じ企業の生産活動に影響するだけでなく、中国人消費者の生活や消費スタイルを大きく変えそうです。中国市場戦略研究所の徐向東代表による中国人消費者の足元の変化と今後の見通しを紹介します。

――今回の問題をどうみていますか?

 まず新型コロナウイルスで被害にあった方々へお見舞い申し上げるとともに、一日も早い回復をお祈り申し上げます。事態をいち早く収束させるためにも、頻繁に手洗いするなどして感染を防ぐよう十分な警戒を心がける一方、恐怖心にあおられてパニックにならず、冷静に対応すべきだと考えています。

化粧品、オンライン対面販売にニーズ?

――中国人消費者はいまどんな生活をおくっていますか?

 外出を控え「籠城生活」をしています。会社や学校の春節休暇が延長されたことで、最初は長期の休暇を喜んでいた人もいたようですが、実は1週間をすぎたところから、次第に退屈さに耐えられなくなっているようです。特に男性は時間をつぶすため、オンラインゲームに時間を費やす人もいます。オンラインゲームの「テンセント」の売り上げは急激に伸びています。

 家で体を動かすゲーム機にも関心が集まっています。しばらくの間、多くの人が通うジムやヨガ教室は敬遠されそうで、今後こうした「1人で気軽にできる運動」が、若者の中で新しいトレンドになるかもしれません。実際、昨年末からインターネット上の通販番組では、「一人で気軽にできる運動グッズ」が話題になっていました。

――今回の騒動で中国人の生活や中国でのビジネスはどう変わりそうですか?

 感染を防ぐために人との対面を避けたい人が増えるので、消費生活はますますオンラインにシフトします。配達員と接触しないですむ宅配ボックスもさらに普及するだろう。サービス関連もネットにシフトします。例えば、子供が通う塾。在宅でも通える「オンライン教室」が増えると思います。化粧品のネット通販では「オンラインのビューティーアドバイザー」がでてきても不思議ではありません。

家庭内備蓄や在宅勤務普及へ

 見逃せないのが、「家庭内の蓄え」です。日本では2011年の東日本大震災後に備蓄意識が高まりました。いざという時を備えて、家庭では水やパックご飯、マスクやタオルのほか、緊急時の医療セット、消火器、懐中電灯なども備えています。こうした習慣は、上海のような大都市でこれから徐々に定着するでしょう。

 ビジネスや働き方も大きく変わります。弊社の協力先である中国のネット通販企業は、コールセンターを運営しており莫大な数の社員を抱えていますが、春節の間でも業務は止まっていませんでした。社員が在宅勤務できる「クラウド・オフィス」をいち早く導入していたからです。アリババ社が開発したネット上の業務管理システムを使えば、在宅で働く社員の仕事をきちんと把握できます。今回の問題を契機に働く環境を見直す企業が増えそうです。中国政府も新型コロナウイルスによる経済活動の停滞を心配しているため、ネットショッピングやクラウド・オフィスを後押ししています。

ボランティア活動が拡大

――中国の社会全体も変化しそうです。

 中国最大のSNS「微博(ウェイボ)」で、武漢の若者がアップした映像が話題になっています。封鎖した武漢の日々を記録した映像です。YouTubeでも「武漢封城日記」としてアップされています。公共交通が止まって移動手段を失った医者や看護師を、マイカーで病院まで乗せるボランティア活動などを紹介しています。

 今回の問題を契機に、こうした武漢市民による自発的なボランティアのネットワークが増え、市民生活に大きな役割を果たしています。彼らは、スマホのオンラインチャットを活用し、毎日、マイカーで医者や看護師を病院に送り、救助物質を各病院に運び、あたたかいご飯と料理を作り、お弁当を病院に宅配するなど、さまざまな活動で現地の救助活動を支えています。感染が起きた初期のころ、市内の病院は準備不足で医者や看護師はとても苦労しました。今はこうした市民ボランティアが大きな助けになっています。現在、4万~5万人の武漢市民がボランティア活動に参加しているといわれています。市内の感染者を超える人数です(2月5日時点)。事態の早い収束を祈りながら、大きな希望をもって、新しい生活やチャンスの到来を期待しています。

中国市場戦略研究所が2月6日に発行したメルマガを再構成)

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。