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仕事のできる50代が「できないこと」にあえて挑戦すべき理由 トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 もちろん、運動などであえて「ツライ」体験を求めるミドルやシニアがいる一方で、仕事の中でも今の能力を少し超えた目標に挑戦する人もいる。

 40代のBさんがこんなことを言っていた。

 「ベテランになってきて、だいたいどんな仕事でもわかってしまうんです。もちろん、全てが簡単な仕事ではないですが、難しくても、“こうすればこうなるな”と先が見えるというか、見通しがつきます。完全なる未知で、“どうしよう?”と途方に暮れることもなければ、“わからない”“できない”という苦しい経験もない。つまり、後輩たちと比べたら、各段に楽にできてしまう」

 仕事は多忙だし、年々難易度を上げて仕事に取り組んでいるように見える彼女でも、「楽にできてしまう」と思うのだなぁと聴いていると、さらに彼女は「だから、こういう言い方は、いけないかもしれないけど、“できてしまう”仕事ばかりだと、自分で自分がつまらないんです」と続けた。

 仕事のモチベーションが下がっているとか、仕事自体がつまらなくなったという意味ではない。彼女は、どの仕事も一生懸命取り組んでいるし、顧客からも高い成果を得ているのだが、「見通しがついてしまい、自分の成長が感じられない」ということだろう。

 そこで彼女はどうしているかというと、「できるだけ未知の、これまでの経験とは勝手の異なるものを先輩などから引き継いだり、新たに自分で立ち上げたり」して、成長実感を持つようにしているのだそうだ。

 「できること」だけに囲まれていると、それはそれで「不安」「つまらない」という気持ちを持つのは私もわかるような気がする。

 そう、ミドルやシニアになると、たいていの仕事が、「コンフォートゾーン」の中でできるようになる。そこに留まり、満足してしまう人もいるだろうが、よくよく自分の心の奥底を探ると、「本当にこれでいいのか」「私にもまだ可能性はあるのではないか」という意識があるのではないだろうか。

 彼女は、難易度の高い仕事やレベルの高い引き継ぎ仕事を自分から取りにいくことで、「コンフォートゾーン」から意識的に出て行こうとしている。彼女は40代だったが、50代だって同じだ。

「コンフォートゾーン」を抜け出し「苦楽しい(くるたのしい)」経験をしてみる

 「どんな仕事でもだいたいわかってしまう」というのは、今やっている範囲の中でのこと。

 誰だって、やったことない仕事はたくさんあるはずだ。その中から一つでも取り組んでみればそれなりに「できない」「苦しい」が味わえる。

 それを徐々に自分のものとし、「自分だってまだまだ成長できるんだ」と思えれば、苦しくても、楽しいと感じられるようになるに違いない。こういう経験を「苦楽しい(くるたのしい)」と表現している人がいた。

 その「くるたのしい」経験が、50代でもまだまだ「伸びしろあるぞ!」と実感させてくれる。

 以前に書いたように、シニアが何かに挑戦している姿は、若手にも好影響を及ぼす。

 あえて「やったことない」「最初は苦しいこと」を見つけて恐る恐るであっても挑戦してみるのも悪くない。

 私は50代になってから、意識的に、いくつか大きな「くるたのしい」仕事に取り組んでいるが、案外、周囲が応援してくれて、それはそれでよいものだ。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 シニアが何か新しいことに挑戦しようとすると、周囲から「年寄りの冷や水」のように扱われることがあると聞く。あるいは、「もう定年も近いのだから、そんなに無理しなくてもいいじゃないですか」といったことも言われることもあるそうだ。

 「えいやっ」と取り組んでみても、そんな風に気分が少し萎えるようなことを言われてしまうと、シニアもしゅんとしてしまう。

 若い人からすれば、シニアは「もうゴールみたいなものに到達していて、成長欲求はない」と思うのかもしれないし、そう思われるのも仕方ないシニアもたくさんいるのだろう。けれど、何歳であろうと、何かをやろうとしている人に対しては、驚くのではなく、応援していただけたらうれしい。

 「もう50歳過ぎたのだから、そんなことしなくても十分でしょう」「もうベテランなのに、いまから新しいことをするんですか?」ではなく、「わぁ、新しいことを始めたんですか?応援してます!」「初めての仕事に取り組んでいるんですね。私も頑張ろう!」などと言ってもらえるほうがシニアは嬉しい。
田中淳子(たなか・じゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。
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キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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