長島聡の「和ノベーションで行こう!」

100年後見据えた地球環境づくりを本気で考え、MaaSに取り組む 第33回 MIRAI-LABO 平塚利男・代表取締役に聞く

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実物を作ってから図面に落とす

長島 さきほど、実物を作ってから図面を描くという話がありました。現場に出向いて実際に実験してみるという話もありました。そういった開発の進め方も独特です。

平塚 まずはこれまで世の中になかったものを実物として作ってみる、または、これが欲しいというニーズをもとにお客様が必要とするものを実物として作ってみるのが弊社の開発の基本です。さらに、CO2削減、省エネ、環境問題の解決といった弊社の経営理念に合うものに開発を絞り込みます。

長島 御社のLED照明の省エネは桁違いであるうえ、広い用途があります。いくつかご紹介いただけますか。

平塚 室内照明として活用した例には、総務省の合同第2庁舎があります。小池百合子都知事が環境大臣だったとき、総務省合同第2庁舎を世界一の省エネビルにするという計画があり、その一環として、エレベーターホールに弊社の超省エネダウンライトを導入しました。従来は約38ワットの蛍光電球を使っていましたが、弊社の照明は4.5ワットで同等以上の明るさを実現しました。2019年4月に撤去されるまで10年間、使われていました。

 最近では「X-teraso(エックステラソー)」という、人命救助などで人間が背負えるバッテリー充電式のLEDライトを開発して、警視庁の全ての機動隊などで採用いただいています。背負うことができて、これだけ明るい照明システムはほかにありません。LED照明が省エネであるため、発電機は不要で、本体重量はバッテリーも込みで5キロと超小型軽量のものにできました。

長島 ライトを背負うと普通は、ライトに照らされた頭部の影が前に出るはずなのに、このライトでは出ないことも特徴ですね。足元に死角が生じなくなり安心ですが、これは仕組みがまったくわかりませんでした(笑)。

平塚 この技術によって、緊急災害時の捜索に変革が起きました。震災などの災害時に捜索や救助を行う場合、原則として夕方以降の捜索を打ち切るのが普通です。それは活動する隊員の二次災害を防止することが目的ですが、この照明システムを使うことで24時間の捜索が可能になりました。電源はバッテリーですが、半径30メートルの広い範囲が明るくなります。

MaaS関連技術として道路に敷き詰める太陽光発電システムを開発

長島 MaaS関連技術として、太陽電池を道路に敷き詰める太陽光発電舗装の開発にも取り組んでおられますね。昼に発電した電力をバッテリーにためて夜間の照明などに使うとともに、将来は自動運転車の電源としての用途も視野に入れるなど、幅広い活用方法が検討されているようですが、どのような背景で取り組んだのでしょう?

平塚 太陽光発電舗装のもとになった太陽光発電システムは、柔軟性のある非結晶系の発電パネルを使うもので、会社勤めのころから私が15年にわたり研究を続けてきました。ご存じかもしれませんが、大手メーカーの太陽光発電パネルは結晶系の硬い板状のものでエネルギーの変換効率が高いことが特徴です。その結晶系に押されて、非結晶系の技術を手掛ける会社は弊社を除くとほぼゼロになりました。

 しかし、変換効率で劣るとはいえ、非結晶系の発電パネルには結晶系にない特徴があります。時代が変わり、そうした特徴が改めて有用になってきました。

 非結晶系の大きな特徴は出力電圧が結晶系に比べて高いことです。EVの普及に伴って、そのバッテリーをリユースしたいというニーズが出てきたのですが、EVのバッテリーを充電するには、非結晶系パネルの高い電圧のほうが効率は良くなります。また、耐久性が高く、平坦な面に設置して発電するときには非結晶系のほうが実用的です。こうした特徴を生かす用途として太陽光発電舗装が生まれました。

長島 大手が手掛けない技術に取り組むという点では、筋が通っていますが、太陽光発電パネルを道路に舗装しようとは普通、考えません。

平塚 私は20年前から、太陽光発電パネルは道路に敷くよりほかにないと思っていました。もっとも、当時は太陽光発電パネルのセミナーなどでその考え方を唱えると笑い声が出たものです。

長島 結晶系の硬いパネルを道路に敷くと考えたせいでしょうか?耐久性は不足しますよね。

平塚 理由の一つはそうですが、当時、私が道路に敷く以外にないと主張した最も大きな理由は、我が国の国土面積を考慮した環境問題でした。太陽光発電パネルは、建物の屋根の上に張れるだけ張ったら、森林を伐採して山肌を削って斜面をつくり、設置するしかなくなります。本来、環境問題のために太陽光発電に取り組んだのに、CO2を吸収すべき森林を減らすのは本末転倒です。

 既に開発が終わっている道路は、メンテナンスコストは掛かっても何も生みません。その道路が電力を生み出すことが大きな付加価値だと考えています。設置した以降のメンテナンスや交換は必要ですが、道路の舗装も定期的に張り替えるものなので、太陽光発電パネルも同様に行うだけです。開発した太陽光発電舗装パネル「Solar Mobiway(ソーラーモビウェイ)」であれば、曇天でも、幅広い角度から太陽光が当たっても、一定の電力を供給できます。

長島 非結晶系のパネルを、エネルギー変換効率だけではなく、そうした多角的な視点でとらえられているわけですね。その上で、すごいと感じるのは、地球環境問題やサステナビリティー向上へ本気で取り組むという想いがブレないところです。

平塚 そうです。その視点でしか私の結論は出てきません。そのせいで、若いときには、ほかの研究者と意見がよくぶつかっていましたが、今、CO2の削減をはじめとして地球環境に良い仕事以外しないという経営方針を掲げる弊社の社員が増えているのを見ると、少しずつでもその想いが理解される世の中になりつつあると思います。

長島 突き詰めたいのは技術では全然なくて、社会に役立つ本質的で新しい価値を生み出したいだけですよね、

平塚 おっしゃる通りです。「本来こうあるべき」というところをやるだけです。確かに、サステナビリティーに対する理解があまりない時代が長かったと思いますが、最近は変わってきたと感じます。弊社の経営理念は「常識を覆す省エネ技術の提供を通じて100年後を見据えた地球環境創りに貢献する」というものですが、100年後のイメージがわく若い方々が増えています。そういう人たちの背中を押して、地球環境やサステナビリティーに対する世の中の意識を変えて行きたいと思います。

長島 最後に、御社のホームページにあった「最高の人間力」についてうかがえますか?これはどんな想いを込めて書かれたのでしょうか?

平塚 「人間力」にはいろいろな捉え方がありますが、「ほかの人を助けるためのアンテナを張り巡らせて生きることで、巡りめぐって自分にリターンが来る。その積み重ねによって社会へ貢献できる」という想いを込めています。

 サステナビリティーという言葉には「循環する」というニュアンスを感じますが、循環は、自分のことだけを考えていたら成り立たない仕組みです。人間の生き方も同じではないでしょうか。

 最初は、こうした「人間力」の定義を説明しても理解できない場合もありますが、何かを行って、相手から「ありがとう」という言葉をもらったときは、誰しもうれしい。それを世の中では「社会貢献」と呼んでいるのであって、そもそもは一人ひとりの行動の結果なんだ――そういう話をよく社内でしています。

長島 そうですね。その通りです。本日はどうもありがとうございました。

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キーワード:経営、イノベーション、ものづくり、技術、製造、経営層

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