長島聡の「和ノベーションで行こう!」

100年後見据えた地球環境づくりを本気で考え、MaaSに取り組む 第33回 MIRAI-LABO 平塚利男・代表取締役に聞く

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「専門はありません、雑学です」と答えています

長島 ありがとうございます。それにしても不思議なのは、通信技術に22年間携わっていた方が、バイオテクノロジーを3年間勉強して事業化したあと、省エネ型のLED照明を手掛けるなど、新しい領域の事業へ次々と挑戦していることです。いずれも環境問題、サステナビリティー関連の技術であり、「ぜひ手掛けたい」という強い想いがあったのでしょうが、御社の規模ですとこれほど幅広くは取り組めません。

平塚 「ご専門は何ですか」と聞かれたとき、私は「専門はありません、雑学です」と答えています。専門がある研究者は視野を狭めて深掘りすることで成果を出しますが、私の場合は、視野を広げて、今まで見えなかったものを見るように心がけています。そうした発想をするからこそ、世界中の国で特許を取得できる独創的な技術を開発できると考えています。

 会社勤めのとき、多数の研究者をコーディネートしていた経験がその背景にあります。本当に優秀な研究者の方々と、緊密にコミュニケーションをしながら幅広い分野の研究についてお手伝いをしたことで、バイオテクノロジーやLED、バッテリー蓄電、太陽光発電など多くの技術の知識を得ることができました。併せて、この技術とこの技術を組み合わせるとこうなるといった、複数の専門技術を統合・俯瞰する視野を持つことができるようになりました。

 省エネ型のLED照明システムに取り組んだのは、ホタルの自生環境を再生する事業の一環でした。全国にホタルの自生環境を作ったのですが、併せて、ホタルを見に来る人の安全のために防犯灯を設置するように行政から指導があったのです。しかし、当時の水銀灯や蛍光灯の照明は紫外線を多く含んでおり、ホタルを含めた昆虫類がそれに集まってしまうなどでせっかく再生した環境を壊してしまいます。そこで紫外線の少ないLED照明に着目しました。

 当時のLEDは暗く、世界中のほとんどの照明メーカーはレンズの技術で照射距離を延ばそうと研究開発をされていました。弊社がそうした大手と同じ技術で取り組んだのでは事業をやる意味はありません。そこでまったく別の発想に基づくLED照明システムを研究しました。

 私が着目したのは、日本が世界に誇れる「ろうそく」の照明文化です。日本の昔の文献には、部屋の四隅にろうそくをともした「あんどん」を置いて読み書きしたという記述があります。また、掛けてあった十二単の色が綺麗に見えたという文献もありました。

 ちなみに、ろうそくの1本当たりの明るさは一定です。細くても太くても、明かりのパワーは変わりません。時間が長く持つかどうかだけが違いです。部屋の四隅にろうそくを置いたぐらいで、本当に読み書きができるぐらいに明るくなるのだろうかと思いました。

 確認してみようと自宅で夜、同じようにろうそくをともして実験したところ、真っ暗で1メートル先も見えませんでした。これには何か仕掛けがあるはずだと考えました。お寺などのお勤めでは、昔から朝4時頃にぞうきんがけなどの作業をやっています。その照明は、ろうそくだったと想定し、実際にどんな仕掛けがあるのか見に行きました。

長島 見に行くという行動力がすごいですね。

平塚 行くと想像したとおり、ろうそくが照明になっています。しかも明るい。私が着目したのは、建物の構造でした。お城、神社仏閣、お屋敷などはみんな白いしっくい壁です。そこで、しっくい壁の部屋を探して、改めて実験すると、ろうそくの明かりが拡散して部屋全体が明るくなることがわかりました。

 ちょうちんでも試してみました。十手持ちが人斬りを走って追いかけたときに、日光東照宮の杉並木道で1本先の木の距離にいた人斬りの顔が見え、人相書きが出たという昔の文献がありました。私が入手したちょうちんで実験すると、暗くて走ることなどできません。

 そこで本物の十手持ちのちょうちんを探しました。調べると、ろうそくを立てる部分の後ろに銅版をたたいて作った反射板が仕組んであったのです。早速同じような反射板を自分でつくり、暗かったちょうちんにつけると、30センチしか届かなかったちょうちんの中のろうそくの光が、5メートル先まで届きました。

 その反射板としっくい壁の拡散効果を組み合わせることで、LEDの形状に左右されず、その配光や色むら・照度などを効率良くコントロールし、影のできづらい「リフレクター」を創ることに成功しました。そしてこのリフレクターを基に図面を起こしたものが特許となりました。それらは現在、弊社が行う事業の根幹の技術となっています。

長島 しっくい壁をもとに「リフレクター」を開発できたという話は、イメージしやすいですね。要は、光を1点に集めるのではなくて、均一に明るくするのですね。

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