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アフリカの衛生向上、ビジネスで挑む 途上国支援の夢追求 サラヤ海外事業本部課長補佐・森窓可氏に聞く

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―― さて、東アフリカで次は何に取り組んでいきますか。

 2014年、サラヤはウガンダで初めてアルコール手指消毒剤の生産を開始し、それが同国からも正式な手指消毒剤として認められました。現在は年間10万リットルの大台を超え、月間1万リットルを超える月もあります。また、スナノミという寄生虫による疾患に対処する医薬品を開発しています。日本にはなじみのないスナノミ症という疾患ですが、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:NTDs )としてケニアでは認められている疾患です。

 医療衛生の次のステップとしては、食品衛生ですね。日本国内でも販売している中性洗剤や殺菌剤入りのせっけん液、そして急速冷凍機「ラピッドフリーザー」や微酸性電解水発生装置「サニスター」などを活用して食品を加工し、衛生的で高付加価値を生み出す――それをウガンダの農業生産者や漁業者など一次産業従事者に提案し、利益を上げてもらうビジネスモデルを模索しています。

 今年度は経済産業省補助事業の「飛びだせJapan! 世界の成長マーケットへの展開支援補助金」に採択されました。これはその名が示しているように、中小企業が日本を飛び出して発展途上国で事業展開を目指すというプロジェクトで、今年度で5回目を迎えます。採択されたプロジェクトは、食品の衛生管理に役立つラピッドフリーザーとサニスターをケニアの貸しキッチンラボに導入するというもの。このキッチンで現地の方々に調理を学んでもらうほか、レストランの開業を目指す方や新しいメニューを開発したい方に使ってもらうというものです。

 プロジェクトは1年限りですが、その後にこのラボで学んだ食品加工における衛生管理を実際のレストラン経営に生かしてもらえればと思っています。また、このラボで開発した加工食品をサラヤブランドとして販売させていただく交渉も考えています。さらに、レストランや加工食品にとどまらず、サラヤやパートナー企業の方々のリソースを最大限活用して、ケニアの農家さんや漁師さんなどを巻き込んで一次産業から製造加工の二次産業、その先の流通販売の三次産業までフードバリューチェーンを構築していければと思います。

 例えば、大手のチェーン展開しているレストランがあれば、こんなことも可能です。ウガンダではおいしいフルーツがたくさん採れて、そのフルーツで作るスムージーが人気です。しかし、シーズンが限られるので、シーズンオフには味わうことができません。一方、シーズン中はフルーツが採れすぎて、流通できなくて廃棄しているという現状があります。そこでシーズン中に加工したスムージーを適切に冷凍保存すれば、シーズンオフでも販売できるのです。ウガンダでそのフルーツ産業の川上から川下、最終消費者まで、喜んでもらえます。

―― 経産省の補助金が得られるのが1年限りであっても、そのプロジェクトをきっかけにその先の永続的なビジネスに発展するということですね。

 更家悠介社長の口癖は「まずはやってみなさい」で、その後「始めたからには継続してやりなさい」と。ですから、このプロジェクトも始めたら最後、やめられないんです。ちゃんとビジネスとして永続するよう、考えながら取り組んでいます。

 サラヤのアフリカビジネスは2011年にウガンダで拠点を立ち上げたのに始まり、ケニアでは2017年に拠点を設立し、今回の経産省のプロジェクトでここケニアに軸足を移しつつあります。ウガンダでは、アルコール消毒剤は「Saraya」と呼ばれ、需要を増やすことができました。予算が少ないという課題はあるものの、プライベート予算やJICAとの取り組みなどの活用により、購入・使用が進んでいます。ケニアでは競合他社さんがすでに参入していたり、試用期間が長いなど、実際の導入となるとものすごく時間がかかるという課題があります。ただ、人口もマーケットもケニアの方が大きいので、東アフリカのビジネス拡大と見据えると、ケニアでの注力は必須なんです。

 ケニアはマーケットが成熟していることもあり、病院をターゲットにする医療衛生分野では競争が激しいのが現状です。であれば、違う分野での展開を考えていこうと。伸びしろがあるだろうと目指すのが食品衛生分野で、しかもBtoC商品なんです。例えば、サラヤの「ラカント」は、糖質を控えたいという糖尿病患者さんにも利用していただいている「食品」です。ケニアにおいても糖尿病患者が増え、社会的課題になりつつあります。ケニアのこれからのマーケットに合致するのではないでしょうか。

 ウガンダ、ケニアと、東アフリカの人々といっしょに課題を見つけ、ビジネスでの解決に邁進してきました。地球環境が激変する中、これからも新たなに課題は絶えず生まれてくるでしょう。衛生、環境、健康にかかわることであれば何をやってもよいと言われていますので、それを解決するため、挑戦をやめるつもりはありません。

(聞き手は中野栄子)

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