経営層のためのグローバル・マーケティング

資生堂をV字回復させたアッパー・マーケティング 明治大学経営学部教授 大石芳裕

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 筆者はこの連載を通して、「誰に、何を、どのように供給するかに関わる諸活動」であるマーケティングこそが経営の根幹であることを訴えてきた。どのような組織であろうと、組織の存在意義は誰かの要望(ニーズあるいはウォンツ)を満たすことにある。みずからの組織が対象とする人・組織を定めないと(対象市場設定)、何(製品あるいはサービス、以下合わせて商品と呼称)を供給するのかが定まらない。対象市場設定と供給すべき商品が決定された後、商品を顧客にどのように供給するかが決定される。このことについては2019年10月7日掲載の「ネスレなど実践 マーケティング中核のH型経営」で述べた。

 日本企業においては、良い商品を開発・製造してもマーケティングが弱いため競争力を保持できない場合が多い。実際、経産省の『2013年度ものづくり白書』や山下裕子他著『日本企業のマーケティング力』などにおいても、その点が強調されている。さらに、日本企業におけるマーケティングの地位が低い。マーケティングはスタッフ部門と思われ、開発や製造、営業、財務、情報、人事などを担当するトップマネジメントは存在するのにマーケティングを担当するトップマネジメント(CMO:Chief Marketing Officer)はいないということが多い(神岡太郎『CMO マーケティング最高責任者』、同『マーケティング立国ニッポンへ』)。

マーケティングを矮小化する経営層の誤解

 なぜ日本企業においてはマーケティングの地位が低いのか?筆者を長年悩ませてきた課題であった。「欧米企業に追いつけというのでモノづくりに励んだ」、「安くていい商品を作ることで1980年代まで成功してきた」、「営業が強く、マーケティングも営業の一部と考えられてきた」などいくつかの理由も考えられるが、最近は「経営層がマーケティングを矮小(わいしょう)化して捉えている」と考えている。

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