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福知山線・笹子トンネル…ヒヤリハット軽視で大事故に 失敗学に学ぶ「失敗しないビジネス」(4)

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航空界で「副操縦士の務めは機長をチェックすること」

 技術的には事故発生のカーブに自動列車停止装置(ATS)を設置しておけば大事故は回避できた。しかし全国に一斉にATSを設けるのは現実的ではない。飯野氏は「運転士は事故の当日、さまざまなミスを重ねており車掌の問いかけにも無言だった。失敗学の観点では、トラブルを起こした運転士を直ちに交代させるシステムを構築しておかなかったのが真の原因だ」と説く。

 飯野氏は、くむべき教訓が多いとして航空界のケースを示す。必ず機長と副操縦士がコンビを組む。副操縦士は、非常時に備えての交代要員という役割だけではない。機長が正常に操縦しているかどうかをチェックするのも業務に含まれる。チェックを怠れば処罰の対象になりうるという。「福知山線事故でも、全駅は無理として、せめて主要駅には交代運転士を配備しておきたかった」と話す。

 しかし福知山線の事故後、JR西日本は指差喚呼(しさかんこ)を徹底するようにした。同社の運転士は絶えず指差し声を出す動作を繰り返していたという。飯野氏は「指差喚呼に気を取られ疲弊し、かえってミスが出やすくなったかもしれない」と疑問を呈している。

 JR山陰線の江原駅(兵庫県豊岡市)で昨年12月末、ベビーカーが1メートル下の線路に転落し、2歳の男児がおでこを擦りむく軽傷を負った。列車の遅れは少なく、ベビーカーと列車の接触もなかった。このトラブルでは、まず母親が電車に先に乗り込み、ベビーカーを引き上げようとしていたところ、電車のドアが閉まってしまったという。

 運転士は「鏡で3回確認したが気付くことができなかった。ベビーカーのあたりは陰になっていた」としている。しかし「大事故に至らなかったとして放置する組織は、次の大トラブルを必ず招く」と飯野氏は強く戒める。

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