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福知山線・笹子トンネル…ヒヤリハット軽視で大事故に 失敗学に学ぶ「失敗しないビジネス」(4)

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 JR福知山線事故の主因は「日勤教育」ではなくヒヤリハットの見過ごしだった――。飯野謙次・失敗学会事務局長は国内の大事故のほとんどが、実はヒヤリハットの軽視から始まったとみている。しかし、今なお企業の多くは小さな事故や異変を見逃し「おざなりな原因究明で済ませている」と警鐘を鳴らす。

運転士の変調を見逃したことが大事故に

 2005年のJR福知山線事故はヒヤリハットを見逃し、失敗の原因を見誤った代表的なケースだ。

 JR福知山線事故 JR塚口~尼崎駅間で快速列車が脱線し乗客と運転士合わせて107人が死亡、562人が負傷した。ダイヤの遅れを取り戻そうとした運転士が、速度制限を大きく超えて走行し運転を誤ったとされる。航空・鉄道事故調査委員会は脱線の原因を「半径304mの右カーブに時速約116kmで進入し、1両目が外へ転倒するように脱線し、続いて後続車両も脱線した」と結論した。福知山線は、競合する路線への対抗策として秒単位での列車の定時運行を目標に掲げていたとされている。

 この時、運転士を追い詰めた主因として「日勤教育」が注目された。目標を守れない社員に再教育などの実務に関連したものではなく、懲罰的なものを科し、就業規則や経営理念の書き写しや作文・レポートの作成を一日中させた。事故を起こした運転士は運転歴11か月。過去に運転ミスや苦情などで3回の日勤教育を受け、知人や友人に「厳しい研修だ」「給料がカットされ、本当に嫌だ」「降ろされたらどうしよう」と話していたという。

 同社は私鉄各社との競争に打ち勝つことを意識するあまり、スピードアップによる所要時間短縮や運転本数増加などを進めていた。従業員もダイヤの乱れなどでの乗客からの苦情を過度に恐れていたという。国土交通省の事故調査報告書は「日勤教育などのJR西日本の管理方法が関与したと考えられる」と報告している。

 しかし飯野氏は、事故の直接原因は日勤教育でないと言い切る。当日の運転士の変調を見過ごした点にあると強調している。

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