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福知山線・笹子トンネル…ヒヤリハット軽視で大事故に 失敗学に学ぶ「失敗しないビジネス」(4)

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 線路に落ちた男児は監視カメラを見た駅員によって救出された。電車はワンマン運転で運転士しか乗っておらず、ホームにも駅員はいない状況だったという。よく訓練された運転士でも、安全確認に限度があることが証明されたのだ。「次回からベビーカーには十分注意して安全確認に努めるのでは、対策として全く足りない」と飯野氏は語る。テレビモニターの設置やホームに常に駅員が1人はいる体勢への変更が必要とみる。

 ■原因究明を怠ったことが湯沸かし器の大事故に

 ヒヤリハットに気づいていても真摯な原因究明を怠り、犠牲者を増やしたのが06年に発覚したパロマ湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故だ。

パロマ湯沸かし器事故 国内で給湯器部門シェアトップのパロマが、1980年代に供給した屋内設置型の瞬間湯沸器で、排気ファンの動作不良を原因とする一酸化炭素事故が20年間に28件(死亡21人・重軽症19人)発生した。パロマは自社の責任を否定していたものの、96年の死亡事故に関して遺族の要望に応える形で警視庁が再捜査を実施し、一酸化炭素中毒事故の続発が発覚するきっかけとなった。

 飯野氏は消費庁の消費者安全委員会の専門委員として事件の調査に加わった。最初の死亡事故は85年。飯野氏は「パロマは早期から事故を知りながらサービス担当者が行った改造が原因と決めつけ、88年に不適切な改造をせぬように社員とサービスショップに呼びかけて終わりしていた」と振り返る。

 当時ひんぱんに行われていた改造は、制御コントローラーに不具合が起きた場合でも、安全装置の1つをバイパスしてお湯が出るようにするものだった。しかしその安全装置は、排気ファンが回らなくなったときにガスを出なくする検出回路で安全のために欠かせなかった。「改造後に新たな故障で排気が十分でなくなっても、検知できずに湯沸かし器はお湯を出し続け、ガスの不完全燃焼で一酸化炭素が部屋内に流れ込んだ」と飯野氏。

 排気ファンとコントローラーは品質が悪く、度々不具合を起こしたという。少し配線を変えれば迂回できる。パロマは「なぜ不適切な改造がサービス部門に広まったのか」を突き詰めなかった。飯野氏は「コントローラーが壊れやすく問題の改造が誰でも思いつきやすいことまで解明していれば、もっと早くに積極的なリコール(回収・無償修理)が可能だっただろう」と結論する。

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