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春節商戦 訪日中国人客には「売る」より「体験」を

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 中国の春節(旧正月、1月25日)に伴う大型連休に入り、訪日中国人観光客向けの春節商戦が始まった。中国で発生した新型肺炎の拡大懸念が消費に影響を与える可能性もあるが、東京五輪・パラリンピックを控え、企業は春節商戦をその前哨戦とみている。ただ、統計では中国人観光客の訪日消費額は減少傾向にある。中国人の日本製品への関心は薄れているのか?

 観光庁が1月17日発表した「訪日外国人消費動向調査」(速報)によると、2019年の中国人観光客の消費総額は前年比14.7%増の1兆7718億円と全体の36.8%を占め、国別の首位だった。中国人観光客数が同14.5%増の959万4300人に増えた(日本政府観光局調べ)ことが消費総額を押し上げた。

1人あたり消費5.3%減だが…

 1人あたりの消費額は減少している。19年は21万2981円。国別の平均(15万8458円)と比べると5万円以上高いものの、前年比では5.3%減少した。

 内訳をみると、宿泊費(4万5368円)、飲食費(3万6721円)、買い物代(10万8800円)、娯楽等サービス費(6771円)のいずれも前年割れだ。かつての「爆買い」はなりをひそめ、中国人の日本製品への関心は薄れているようにみえる。

 しかし、専門家はそうは考えていない。

 日本と中国の観光情報を発信している行楽ジャパンの袁静社長は「若い旅行者が増えたうえ、旅行目的も大きく変わってきている」とみる。従来はツアー旅行が多く年配の観光客がプログラムに沿って買い物や飲食を楽しんできたが、現在は若い世代が個人旅行で訪日し、買い物というより日本文化を楽しんでいるという。19年の中国人訪日客数を押し上げたのは、両国の地方都市を結ぶ航空路線の新規就航や増便、個人査証の発給要件の緩和だった。日本に対する関心の裾野は広がっている。

 中国人消費者の動向に詳しい中国市場戦略研究所の徐向東代表は「中国人の日本製品に対する需要はますます高まっている。訪日時の買い物の数字だけで判断するのは間違い」という。

 理由は中国人の日本製品の購入ルートの多様化だ。かつては実際に日本を訪れて中国では売られていない日本製品などを購入するといったことが多かったが、現在はバイヤーによる代行を通じた購入のほか、多くの日本製品をネット通販で購入できる。中国は今や世界最大のネット通販市場だ。観光で訪れた日本でわざわざ時間を割いてまで購入する理由はないというわけだ。

製品ストーリーの魅力でリピーターに

 では、訪日時の消費額の数字に惑わされずに、消費者としての中国人観光客にどう向き合えばよいのか。徐代表は「訪日客にとって日本を日本製品の最高の体験の場にすることが重要」と話す。具体的は、日本製品のモノ作りの現場を実際に見てもらったり、化粧品などの丁寧なカウンセリングといったサービスを提供したりすることだ。こうした体験を通じて、日本製品の背後にあるストーリーを伝え、関心をさらに高めファンになってもらえれば、訪日時には少ししか購入しなくても、帰国後にネット通販での購入など通じてリピーターになってもらえるという。実際に全体でみた日本製品の需要は高まっているとみる。

 中国人観光客の1人あたりの買い物代は減ったとはいえ、国別でみれば平均の2倍だ。日本企業にとって中国人消費者が重要な顧客であることにかわりはない。それだけに訪日時だけの消費額にとらわれることなく、中国人の消費スタイルの変化のなかでの訪日消費の位置づけを明確にした取り組みが必要だ。

(町田猛)

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