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柔軟なマニュアルこそ形式知 勝手なカイゼンで事故 失敗学に学ぶ「失敗しないビジネス」(2)

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「正しいマニュアルはいつまでも優秀なマニュアルでは無い

 11年の東京ドームシティにおけるジェットコースター事故も、勝手な「カイゼン」が事故を引き起こしたケースだ。

 東京ドームシティのジェットコースター事故 11年1月、東京ドームシティアトラクションズで、ジェットコースターから男性客が転落し死亡した。男性はカーブに差し掛かったところで、高さ約8メートルから投げ出された。安全バーがロックされておらず、乗客にかかった遠心力がバーを押し上げてしまい車両から飛び出した。東京ドームシティアトラクションズは長期間営業を休止した。

 遊園地の教育訓練では、手で押して安全バーのロックを確認するように指導されていたという。しかし現場では、いつの間にか目視でよいことに変わっていた。飯野氏は「手で安全バーを押す際に前列の乗客の身体に触れることへのクレームがあったようだ」と説明する。クレームを避けるための目視容認が、人身事故につながった。しかも運営会社は、センサーを使った安全ロックの確認など、根本的な解決策にも気付いていた。「経営幹部がマニュアルの手順と理由を理解していても、現場にきちんと伝わらなければ目先の手順にとらわれて重要な情報が忘れられてしまう」と飯野氏。

 最初は愚直にマニュアル通りにこなすうちに、「マニュアルの手順ではなく、その一段上に立った上位概念から仕事の目的と期待される成果が分かるようになる」と飯野氏。そのケースが、18年の草津白根山の噴火における避難活動だと指摘する。

 草津白根山の噴火 18年1月に白根火山ロープウェイ山頂駅の南側で予兆なく噴火が発生した。気象庁は噴火から1時間以上経った時点で噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に上げ、さらにレベル3(入山規制、警戒範囲2km)に引き上げた。スキー場のリフト乗り場付近に多くのスキー客がいたが、草津町が出資する運営する第3セクターの職員らの的確な対応で、被害を最小限に抑えた。

 飯野氏は「想定外の場所からの噴火だったにもかかわらず、草津町が1980年代から火山防災の対策を積み重ねていて、うまく機能した」と語る。その一方で、スピードの激しい技術革新にも適応していくことが重要だと強調する。「正しいマニュアルがいつまでも優秀なマニュアルではない。固定するのではなく、常に柔軟に変更していかなければならない」(飯野氏)と説いている。

(松本治人)

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