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回復?低迷? どうなる2020日韓ビジネス 大東文化大・高安雄一教授&明海大・小谷哲男准教授に聞く

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金正恩氏の1月1日・年頭演説に注目――――――小谷哲男・明海大准教授

 ――日本企業がグローバル展開を進める上で地域的なリスク分析は欠かせません。2020年の朝鮮半島情勢はどうみますか。

 「米朝交渉プロセスは日本企業活動にも影響を与える可能性が高く、地政学的な視点も必要でしょう。2020年は3度目の米朝首脳会談を模索しながら、北朝鮮が軍事能力をさらに拡大させるというシナリオが予想されます。現在は北朝鮮の対米批判が続いていますが、トランプ米大統領との交渉プロセスを決裂させるまでには至らないでしょう。地政学な視点から企業経営者の方にアドバイスするならば、まず北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が行う1月1日の演説に注目です」

 ――北朝鮮による「新しい武力」のミサイル実験があるのではないかという予測も出ています。

 「今年約20回実験した新型ミサイルは最終段階で弾頭の軌道が変わるため、現在の日米韓のミサイル防衛システムでは迎撃が難しいとされています。ただ北朝鮮も大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験までは踏み込まずに、ギリギリの線で米国の動きを見極めようとする可能性が高いでしょう」

 ――北朝鮮の狙いは「制裁緩和・体制保証」なのでしょうか。

 「米国は大統領選挙モードに入るので、トランプ米大統領から譲歩を引き出したいのが狙いです。米国も警戒・監視を高めていますが、非核化協議を米側から打ち切ることはありません。年をまたいでも北に対話を呼びかけ、非核化の措置ごとに見返りを与える柔軟なアプローチを取る可能性が強いです」

在韓米軍の動向も変動要因に

 ――外交的には、以前から北朝鮮が想定したような流れになってきているのでしょうか。

 「以前は、日米韓が最大限の圧力をかけて北朝鮮を対話に引き込むシナリオでした。ところが最大限の圧力をかける前に、包囲網を突破してトランプ大統領の懐に飛び込み、対話モードに入ってきたのです。北朝鮮は実質的には何も放棄していません。それなのに米大統領との会談で国際的な認知を受け、中国、ロシアなどとのつながりも強化されたので、相当なものを得たといえるでしょう」

 「ただ北朝鮮が欲している制裁解除には、国連の安全保障理事会の賛成が必要ですが、英仏が厳しい姿勢を維持しています。一方制裁強化には中ロが反対です。緩和も強化もできない情勢です」

 ――日本の立場としてはどう対応すべきでしょうか。

 「同盟国の立場から米朝交渉の進展は支援すべきでしょう。しかし原則を重視して、核ミサイルの脅威が続く限り緩制裁和はしない姿勢が大切です」

 「北朝鮮の軍事的な挑発に対応できる体制を米国と築いておくことも重要です。北朝鮮の新型ミサイルに対応できる新しい防衛システムを、日米で共同開発していく必要が出てくるでしょう」

 ――中期的に朝鮮半島をみるポイントはどこでしょうか。

 「在韓米軍の動向はひとつのポイントになります。朝鮮半島は、アジアでも珍しく陸上の戦闘部隊が集中している地域です。陸上戦力主体の韓国軍、北朝鮮軍に、在韓米軍、中国の人民解放軍でパワーバランスが取れている状態です。ただ在韓米軍は現在さまざまな動きが出ています」

 「トランプ大統領は駐留コストが掛かりすぎるとみています。米上院が可決した2020会計年度(19年10月~20年9月)の国防権限法では、約2万8500人の在韓米軍を削減する場合、韓国、日本との事前協議のほか米議会への事前報告を義務付けるよう求めています。それでも一方的に削減した場合は、北東アジアのパワーバランスが崩れマーケットやビジネス環境に影響が及ぶでしょう」」

 ――日韓関係をどうみますか。

 「新しく構築し直す時期に来ていると思います。韓国では20年に総選挙、22年に大統領選挙が控えています。こうした韓国の国内情勢が変化するときに、これまでの延長ではない2国間関係を築く準備をしておくべきです」

(聞き手は松本治人)

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