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笑う門にはイノベーション 楽しい職場の作り方 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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 どの組織にとってもイノベーションを起こすことは重要で課題の1つだと思う。だが、それは簡単なことではない。特に、日本ではそれが起こりにくいという指摘も散見する。その背後には、日本の画一的な学校教育、クリエイティブなことがあまり評価されない教育の体制、余裕のない働き方、目先のことに時間が奪われすぎてしまう忙しさ、保守的な経営陣と意思決定の難しさ、改革に伴うリスクへの不安、しぶとく残る上下の関係など枚挙にいとまがない。

 多くの問題は、根深く、どの組織も今日、明日にどうにかできる問題ではない。改善には、個人の力と言うよりも、集団の力が必要だし、場合によっては、政治の力や他国の力を借りる必要がありそうだ。大きなコストをかけず、もっと気軽にできそうなことはないのだろうか。

 そこで、私が提案したいのは、コミュニケーションのアップデートである。コミュニケーションに変化を加えたり、見直してみたりすることで、アイデアを出しやすい組織にすることもできる。あるいは、出たアイデアに立ち止まりブラッシュアップすることもできるはずだ。こうした環境はイノベーションにとって必要不可欠な土壌と言えよう。

 では、それをどのように実現すればいいのだろうか。効率ばかりを重視せずに雑談できる時間や場の確保、コミュニケーションが生まれやすい空間や配置の検討、チームの作り方の工夫、空白の時間を作るなどたくさんの方法がありそうだが、私は笑いの研究者なので、ここでは、笑いとビジネス、笑いとイノベーションの関係について論じてみたい。

米では笑いのコンサルも

 「なんだ笑いか……」と思う人も少なくないだろう。だが、笑いのコミュニケーションをあなどってはいけない。多様な価値観のなかでコミュニケーションしなければならない時代――笑うことで、私たちに共通の前提を得ることができる。また、コミュニケーションが重視されればされるほど、笑いは役立つ。それは、芸能界のお笑い芸人を見ていれば分かるのではないだろうか。なぜ、彼/彼女たちはこれほどまでに人気になったのだろう。なぜ、誰とでも親しく楽しそうに話し、司会を任され、場を取り仕切るのだろう。なぜ、彼/彼女たちは、私たちの日常生活のコミュニケーションの模倣の対象になったのだろう。それらを考えれば、笑いの価値はおのずと見えてくるはずだ。では、ビジネスとの関係はどうだろう。

 例えば、アメリカでは、笑いやユーモアを生み出すこととビジネスには密接な関係があると言われて久しい。そのため、研究も盛んだ。実践面では、組織に笑いを増やすためのコンサルタントも出現しているほどだ。

 現在の笑い研究の権威でもあり、国際ユーモア学会の会長を務める心理学者R・A・マーティンは、笑いやユーモアのある職場を取り上げ、以下のように論じている。

「より楽しい職場環境は、より幸福で、健康的で、ストレスが少なく、より生産的な仕事へのエネルギーを生み出し、よりよいやり取りを労働者と管理者の間に生み出し、さらには、より多くの創造的思考や問題解決をもたらすことを多くの人々が示唆している」

 こうした意見を参照する限り、笑いやユーモアは、ビジネスと非常に相性がいい。では、イノベーションとは、どのような関係があるのだろうか。両者は直結するとは断言できない。だが、笑いやユーモアはイノベーションにいくつかの側面でスパイスを効かせることができる。では、具体的にどう関わるのだろうか。

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