楽しい職場学

笑う門にはイノベーション 楽しい職場の作り方 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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職場が楽しいことはイノベーションの第一歩

 1つ目は、単純だが、「笑いが多い職場は楽しい」である。笑いにもいろいろある。私たちは、必ずしも楽しいから笑うわけではない。しかし、笑いを用いずに、いまが楽しいことをどのように周りに知らせればいいのだろうか。笑いは、ある状況において、誰の目からも簡単に確認できる楽しさのバロメータである。心のなかで楽しいことも重要だ。とはいえ、それを表に出しその場の人達と共有していくことで、職場の空気を楽しくすることができる。楽しさは1人で感じたり作ったりするものではなく、その場の人たちで協力して作り上げるものだ。

 また、職場が楽しいことは、組織から見れば、社員たちのモチベーションアップにつながる。それが、効率や生産性に影響を与え、そこから余裕が生まれる。さらに、おかしみを含む笑いは、ある対象から距離を取ることで成り立つ。つまり、笑いそのものは、その場にどっぷりつかかっていない証であり、余裕があってこその代物だ。

 言うまでもないが、アイデアと余裕には密接な関係がある。余裕がないと、アイデアそのものも生まれにくい。こうした意味で、楽しい環境づくりは、イノベーションを起こすための第一歩になると主張したい。

仲間意識を高める笑いはもっと活用できる

 2つ目は、「笑うことで集団凝集性が高まる」という点に注目したい。日本笑い学会の会長である社会学者、森下伸也氏は、笑いの社会的機能に、集団凝集性があると指摘した。集団凝集性とは、平たく言えば仲間意識の高まりや結束力のことである。仲間意識が高まる理由として、森下氏は、笑いのツボが合い、共に笑い合えることが意味するのは、「知識や価値観、世界観の共同性を相互に確認する」ことで、「笑いをともにする経験は、愉快さと人格の核を同時に共有する経験」だと論じている。

 笑い合う行為は、わずか数秒の行為かもしれないが、その数秒のコミュニケーションで、お互いの共通点を確認し合えるというわけだ。こうした経験が増えていけば組織の結束力は高まるだろう。その環境は、イノベーションにとって必要不可欠な要素だ。

冗談言える環境は心理的安全性高い

 3つ目は、「冗談が言い合える環境は、心理的安全性の高さにつながる」である。誰でも、思いついた冗談やウケを狙った際に、笑いが起きないことは嫌だろうし、その場がしらけてしまったら何らかの責任を感じてしまうのではないだろうか。あるいは、せっかく笑いを取りにいったのに、その冗談に誰も気がついてくれなかったらきっとむなしく思うはずだ。

 しかし、自分が、言った冗談を周りが上手に広げてくれたらどうだろう。ウケ狙いに気づき、その面白さに共感してもらえたらどうだろう。両者を比較すれば、後者の関係性には、信頼関係があることが明らかである。

 それは、会議の場面で、アイデアを率先して発した際の周りの反応と酷似していると感じるのは私だけだろうか。何らかのアイデアをひらめいたとしても、言ってもどうせだめだ、言ってもどうせ変わらない、言ったら恥をかきそうだ、上司に怒られるかもしれないのように構えてしまったら、口をつぐむほかない。

 だが、普段から、冗談を言い合える環境は、会議の最中にひらめいたアイデアをとりあえず言ってみるという行動にうつせることにもつながってくるはずだ。イノベーションを起こすためには、誰もが構えずに発言できる環境が必要なことは言うまでもない。

 アイデアをあれこれ出す環境づくりを目指すことも大切だが、その前段階で、まずは、冗談を言い合える、冗談に気づける、冗談を広げられる環境づくりをしてみてはどうだろう。それが、アイデアをたくさん出せる職場にするための近道だと思う。

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