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MaaSの商機、身近な課題発見から PwCコンサルティング パートナー 早瀬慶氏に聞く

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 鉄道やバスなど多様な交通手段を連携させて最適な移動を実現する次世代移動サービス「MaaS(マース)」への関心が高まっています。フィンランドなど欧州では先行してサービスが始まり、日本各地でも実証実験が始まりました。MaaSで社会はどう変わるのか。商機はどこにあるのか。MaaSに詳しい、PwCコンサルティングの早瀬慶氏に聞きました。

――MaaSとはどのようなものですか。

 モビリティ・アズ・ア・サービス(Mobility as a Service)の略です。多様な交通手段を使った「移動の最適化」といもいえますが、それは1つの要素であり、いまは「都市計画やその持続的運用」の中心を担う概念になっています。移動の対象はヒトだけでなくモノも含み、1つの産業や手段にとどまるものではありません。移動の視点を中心とした社会づくりともいえます。

 「移動の最適化」の事業例としては、フィンランドの首都ヘルシンキの取り組みが有名です。電車やバス、タクシーのほかカーシェアなど多くの移動手段を結び付け最適な移動手段を検索できるほか、乗車券の予約や代金決済ができます。このサービスは人々の生活を変えたほか、町づくりや社会づくりにも影響しています。

「モノからコトへ」が背景

――普及のきっかけは。

 消費者の志向が「モノからコトへ」「所有から共有へ」と移るなか、シェアリングエコノミーの発想が広がり、あらゆることをサービスとして使っていこうとする機運が高まったことが背景にあります。環境などの面でSDGs(持続可能な開発目標)との親和性も高いことからも注目をされています。日本では自動車の販売不振の「犯人」としてカーシェアやライドシェアが注目されたことをきっかけにMaaSという考え方に関心が集まった面があります。

 モビリティとはクルマだけの話ではありませんが、クルマを例にすると理解しやすいのは確かです。PwC Strategy&の調査では自動車産業の利益額は2018年の3800億~4000億ドルから2030年には4900億~5100億ドルになります。増加のけん引役はMaaSです。利益のうち新車販売の占める割合は2018年の41%から2030年には31%にまで減少します。一方、MaaS関連の利益は2018年にはわずかだったものが2030年には11%に達します。MaaSは今後急速に進むとみられます。

日本、公共交通の利便性や物流では先行

――日本はMaaSで遅れをとっているのでしょうか。

 分野によって異なります。例えば、公共交通機関を使って快適に移動できるという観点からは、日本の鉄道は相当進んでいるといえます。時間に正確な運行やスムーズな乗り換えは、世界に誇れる水準です。電子マネー機能付きICカードによる乗り降り・異なる移動手段の利用・小売りを含む各種決済もとても便利です。また、時間指定の配送など物流サービスも高い水準です。各分野とも今後は他の業界やいろいろな手段との連携を深め、移動の利便性をより高めていけばよいと思います。

――MaaSのビジネスチャンスはどこにありますか。

 MaaSという考え方を出発点にするのではなく、まず、周囲にある社会的な課題をどう解決していくかを考えることが出発点になります。その意味では日本には多くの課題とともにそれを克服できる条件が整っています。例えば、都市と地方の二極化、超高齢化社会の到来といった課題に対し、自社の技術を使ってどう解決をしていけばよいか、何ができるのかを考えることが大切です。人口減と高齢化が進み、公共交通機関が消滅した地域を例にしてみると、高齢者を病院へ送り迎えをする移動サービスのほかそれに伴う保険といった周辺サービスの需要があるはずです。そうした取り組みは、世界のなかでも早く高齢化社会を迎える日本ならではのMaaSになるうえ、サービスとして確立できれば世界に輸出できるはずです。そのために、企業1社だけではなく、企業間の協力、さらには産官学といった幅広い連携が必要になります。

(聞き手は町田猛)

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