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学生対応、温かな若手社員に/フィードバックで関心 特別セミナー「採用力が企業の将来をつくる」回答編

ビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆

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 日経BIzGateが11月に開催した会員向けセミナー「採用力が企業の将来をつくる」では、事前に参加者からの質問を募りました。多くの質問をいただきましたが、当日会場ではその一部しかお答えできませんでした。紹介できなかった質問について、登壇者で鼎談(ていだん)、Q&Aセッションの司会も務めたビジネスリサーチラボ代表の伊達洋駆氏に回答を寄稿していただきました。

<候補者群>学生が業界絞り込む前に接触を

Q ナビサイトを利用した採用が難しくなっています。そのような中、学生とどのように接点を作り、候補者群(母集団)を形成すれば良いでしょうか?(金融・証券・保険、カッコ内は質問者の業種)

 採用アプローチは「PULL(プル)型」と「PUSH(プッシュ)型」に大別できます。PULL型とは学生のエントリーを待つアプローチ、PUSH型とは企業から学生にオファーを出すアプローチです。

 ナビサイトを利用した採用はPULL型の典型例であり、会社の知名度や採用ブランドの影響を受けます。有名で良い印象のある企業は採用がうまくいきやすい一方、それ以外の企業は苦戦しがちです。

 そこで、逆求人サービスに代表されるPUSH型を利用・併用することをおすすめします。PUSH型アプローチで採用を進めれば、自社を知らない学生にもアクセスできます。

 しかし昨今、逆求人サービスを利用する学生も企業も急増しており、PULL型同様に、知名度やブランドの影響が部分的に現れるようになっています。人材要件に基づいてオファーを出す学生を焦点化するなどの工夫が求められます。

Q 売り手市場が続く中、更に、自業界の不人気も相まって採用が苦しい状況です。業界に興味を持っていない学生に対して、どのようにアプローチすれば良いでしょうか?(卸売・小売業・商業)

 これまでの学術研究によると、学生の企業選びは、(1)初めに特定の基準で候補企業を大きく絞り込んだ上で、(2)少数の候補を丁寧に比較し、(3)最終的に入社先企業を選び取る、という流れで進みます。

 この流れにおいて、「業界」は学生がしばしば用いる絞り込み基準の一つです。業界に対するイメージが芳しくないと、初めのスクリーニングの段階で候補から外れてしまいます。これが、不人気業界が採用に苦しむ理由です。

 したがって、業界という基準で大きな絞り込みをする前に学生と接触する方が良い、と言えます。それは求職者が自分の適性について理解を深める就職活動の初期に当たります。業界でスクリーニングされる前に、入社先企業の候補に入るように働きかけましょう。

<動機形成>シグナリング効果を活用

Q 学生と対面する状況において、学生の志望度を高めたいと考えています。学生に対する有効な接し方としては、どのようなものがあるでしょうか?(その他)

 「学生ファースト」の姿勢を一貫させることが重要です。すなわち、学生の企業選びがより良いものになるように接すれば、結果的に自社に対する志望度を高めることができます。

 一見、きれい事に聞こえるかもしれませんが、この背後には「シグナリング効果」と言われる心理があります。相手の立場を考慮した接し方を社員が行うことで、学生は「この会社は社員を大事にする会社だ」と認識し、志望度が高まるのです。

 学生の成長を促す「フィードバック」も動機形成の方法です。ビジネスリサーチラボがパフと共同で実施した調査に基づけば、学生が満足・納得するフィードバックを行った会社に対しては、関心度が高まる傾向があります。

 フィードバック研究の中では、例えば、本人の性格ではなく行動や課題に注意を向けさせるような、具体的な情報を提供するフィードバックが効果的だと検証されています。

Q 適切な動機形成のためには、自分に合った仕事を選んでもらう必要があるかと思います。とはいえ、仕事経験のない学生に適職を選べるものなのでしょうか?(自動車、輸送機器)

 仕事経験の豊かな求職者は、仕事内容を吟味して入社先を検討するのに対し、仕事経験をあまり持たない求職者は、就職活動のプロセスそのものから影響を受けて企業を選ぶ傾向があります。

 より具体的には、仕事経験が少ない求職者は、就職活動で出会った社員の性格・能力・振る舞いなどを元に、その会社に入社したいかどうかを考えます。求職者と社員の出会いは「クリティカル・コンタクト」(重要な接触)と呼ばれるほどです。

 動機形成の観点からすれば、業務知識を豊富に持っていて、求職者と年齢が近く、温かな印象のある社員を求職者に接触させると良いでしょう。そのことによって、求職者の志望度が高まります。

 他方で本質的には、例えば実際の業務に取り組むことのできる長期インターンシップなど、仕事内容を知ることのできる機会を企業が求職者に対して積極的に提供する必要があります。

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