日経SDGsフォーラム

デジタルは「転ばぬ先の杖」 近い将来先読み、持続可能社会の立役者

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 未来を予測して、事前に望ましい方向になるように対策を練る。想定外という言葉があふれているが、デジタル文明が急速に進化している今、近未来なら森羅万象をほぼ正確に先読みし、仮想の中でシミュレーションができるようになってきた。デジタルを転ばぬ先の杖(つえ)として活用することで持続可能な社会へと導く。テクノロジーでより良き社会の実現に向けた答えを出す。そのための行動に移す時代になっている。

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再生エネや5G 社会問題を解決

 商社出身で石油などのエネルギー部門に長く身を置いてきた伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の菊地哲社長は「人類の持続性のスパンは、どれくらいの期間なのか」と自問自答を繰り返しているという。社会人となった1976年、当時は石油の可採年数(資源の残余量を時間で表したもの)は約35年。既に枯渇してしまっている計算だが、採掘技術の発展などにより最近ではあと50年は持つとされている。石油資源全体となると150年以上という計算もある。だが46億年の地球の歴史、20万年の人類の歴史のスパンから見れば歴史に刻まれることもないくらいに短い時間だ。

 それでも石油などの化石燃料を使うことによって排出される二酸化炭素(CO2)は地球温暖化の原因とされ、気候変動に大きな影響を与え、未来の脅威となっている。「将来世代のニーズを損なうことなく現世代のニーズを満たす発展」のためには太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせることでエネルギー問題を解決するしかないが、太陽光も風力も天候に左右されるため安定的ではない。

 同時同量の電力需給バランスを保つための近未来予測をCTCは電力事業者に提供している。精緻な天気予測を元に当日から翌日の太陽光や風力で作られる発電量を7%程の誤差で算出。想定される需要量の足りない分を水力発電などで賄う。再生可能エネルギーのバタツキを他の電源を組み合わせて調整し、平準化する。デジタルの力で近未来の正確な予測は可能になったのだ。

 来年から導入が本格化する5G(第5世代移動通信システム)。高速、大量、瞬時、多接続を可能にする5Gはやはり近未来を描き出す。自動運転の道を開き、高齢化が進む農業従事者の負担軽減にも繋(つな)がるはずだ。製造の現場で機械や設備に数多くのセンサーを取り付けることで稼働状況、環境情報などをリアルタイムで収集し、仮想空間上に機器や設備を構築したデジタル情報で最適化を考える。故障の予測なども可能になる。

 IT(情報技術)で社会問題を解決する。明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に向かっている。(編集委員 田中陽)

SDGs17目標、思考回路の軸に――
 もはやSDGsやESG(環境、社会、企業統治)を意識せずに企業経営はできない時代になっています。経営トップだけがその必要性を痛感しても現場が本当にこの言葉を理解してくれないことには組織がその方向に動きません。私は今年、CTCグループの全社員総会で多くの時間を割いてその重要性を説明し、新しい仕事に取り組む際に17あるSDGsのどの目標に関連しているかを考えてもらうことにしました。思考回路の軸をSDGsの目標に据えるのです。私たちの仕事はシステム開発が主体で取引先のSDGsの取り組みにもお役に立っています。
 ITは社会的課題を効率よく解決してくれる手段の1つです。未来を担い、明日(あした)を良い方向に変えてくれる次世代の児童、青少年たちに早くITに親しんでもらおうとこの秋に「CTC未来財団」を設立しました。奨学金や社員によるIT関連の教育を通じて社会貢献の意識の醸成も行います。
 縦横無尽の活躍が期待されるIT産業は一方で、電力消費の大きな産業でもあります。そこでIoT、人工知能(AI)など最先端技術を駆使し、2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量ゼロを実現する中長期の環境目標「2050CTC環境宣言」を策定し、実行に移しています。SDGsが実現される30年までに15年比で30%の削減を直近の目標とし、その先を見据えています。
 8日、リチウムイオン電池の開発の貢献でノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(旭化成名誉フェロー)は記念講演でこう話されました。「技術革新によって、持続可能な社会がまもなく訪れる」。この言葉は私たちへのエールであり、意を強くしました。テクノロジーでSDGsの達成に貢献できると。これからも持続可能な社会をテクノロジーによって実現し、未来を作っていきたいと思います。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、経営、CSR、CSV、ESG、環境問題、SDGs

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