小さな会社が世界で稼ぐ

アメリカの巨大企業と互角に渡り合う薬栓メーカー――大協精工 佐々木ビジネス&ライフスタイルコンサルティング 佐々木 隆彦

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 これからの時代は、「大企業=一流企業」という恒等式は成り立たない。インターネットと人工知能(AI)に代表される第四次産業革命で、大規模なパラダイムシフト(社会規範の大変革)が凄まじい勢いで起こるからだ。時流についていけずに社会的役割を終えた会社は、規模の大小にかかわらず、消えてなくなる。逆に、社会的責任を負った会社は、たとえ小さくても、世界で活躍する存在になる。実は、そんな時代がもう既に始まっているのだ。これからの産業界では、むしろ小回りの利く中小企業のほうが、有利になる可能性が高い。

世界に飛躍するための5つのキーワード

 勝ち残りを目指す中小企業の経営者には、しっかりと左脳にインストールしてほしい行動指針がある。それは、「生産性の再検討」「イノベーションへの関与」「情報の輪への加入」「大企業妄信からの脱却」「世界への飛翔」の5つである。いずれも、中小企業は儲からないという既成概念を覆し、中小企業関係者が持ちがちな諦念感を払拭するものである。これらのキーワードを念頭に置き経営の舵を取ってきた人たちは、自分の会社を「小さくても世界で稼げる企業」に脱皮させている。

 例えば、埼玉県の自動巻線装置メーカーはその良い例だ。

 この会社のトップは、無策な同業がどんどん潰れていくのを見て、「請負稼業ではだめだ。何か付加価値のある(即ち、生産性向上に寄与する)仕事にシフトしないと立ち行かなくなる」という危機感を抱き、イノベーションの種になりそうなものを探した。しかし、業界下位の弱小企業が手にできる情報がそもそも少ないことに気付き、まずは情報の流入口を開拓する方法を必死に考えた。

 思案の末に辿り着いた「社外部下に徹する」というユニークな戦術が功を奏して、今では、世界19カ国に拠点を置く年商300億円の企業に成長している。さらに、同社の技術が業界スタンダードになったことで、欧州のある有名電機メーカーが主導する電気自動車プロジェクトにも招き入れられ、新たな好循環が始まりつつある。

 栃木県に本社を置く医療医薬用パッケージメーカーの例も興味深い。「下請けのままで終わりたくない。いつかは自社で価格を決められる立場になって、大きく成長したい」。そんな大望を持った創業者は、「脱・下請け稼業」の大号令を発し、会社を請負型から開発型に生業転換させていった。保守的な日本の製薬業界にあって、相当辛い思いもしたが、めげずに「研究・開発と高品質」への取り組みを続け、「海外企業とのアライアンス」にも果敢にチャレンジした。そんな努力の甲斐あって、今日では、遥かに規模の大きなアメリカ企業とも互角に渡り合えるグローバル企業になっている。

 いずれの会社も、負けん気が強くて進取の気性に富んだトップに率いられ、先の5つのキーワードを念頭に置いた経営を行っている。この連載では上記2社を含む計3社の事例を紹介しよう。今回は、栃木県に本社を置く医療医薬用パッケージメーカー大協精工について解説する。

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